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分離不安症
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2002/06/07

まず、分離不安という状態を病気として扱うか否かで1つの問題がありますが、動物における問題行動が近年話題になるにつけて、「心の病気」として考える方が増えつつあります。
そもそも、どのような状態を言っているのかといえば、飼い主への依存心が強い犬が1人きりで留守番できない、できないだけでなく、周囲にはばかる事なく大きな声で鳴き続ける、壁やドアを壊す、本来のトイレ以外のところで排泄する等して飼い主さんを悩ませる問題を起こすことを 言っています。
これは、犬と飼い主との間に過剰な愛着があり、犬が飼い主に精神的に強く依存するため、自立した1人前の精神状態にまで発達できなかったためであると説明されています。

飼育書には「犬」と記載されていますが、私は「猫」でこそ、この分離不安が多いのではないかと感じています。
どういうことか言うと、猫ではまだ目が開いていないうちに捨てられる事が多く、このような猫をあわれに思って保護された方が、哺乳から排泄まで、赤ちゃん猫の生存にかかわる全てを面倒みることになります。
生命の維持に必要なすべての事柄を無条件に委ねているのですから、赤ちゃん猫にとっては全幅の信頼であり強い依存が生じます。
そして、相手が母猫であれば、子猫が大きくなる過程で、他の兄弟との関係から自分と母猫以外の第三者の存在を認識し、最後には母猫から「子別れ」を強要され1人での自立した生活をするようになります。
しかし、人間が母猫の代りを努めた場合、この過程がうまくできません。
赤ちゃん猫を保護された飼い主さんは、やさしい方ゆえに、むしろ必要以上に猫に関わってしまいがちです。
このために、そのような猫は社会的に適応できない猫となってしまい、飼い主さんがいるところでは、ひじょうに甘えん坊であるのにもかかわらず、飼い主さんがいないとパニックに陥りやすく、飼い主さん以外の第三者に対して恐怖心から攻撃的にふるまうようになります。
単にそれだけなら、知らんふりしてそっとしておいてあげれば良いのですが、一旦病気になった時に、非常に困ったことになります。
治療や入院が困難な猫として病院に持て余されるようになってしまうのです。
無理に治療することが猫本人にとっても、人間にとっても危険を伴うようになってしまうのです。
私は、このような猫も分離不安と言って良いと考えています。

この分離不安の治療は、とても困難なものになります。
それは、犬にしろ猫にしろ、まずその飼い主さんが、これを病気として認識し、治療しようという意識が希薄だからです。
犬であれば、困ってはいると思いますが、自らが主体となって時間と手間をかけなくてはならないことが取り組みを遅らせています。
猫であれば、飼い主さんと一緒に入る限り問題はないのですから、治療の必要性さえ感じていないかも知れません。

飼い主さんから隔離されてひとりぼっちでいることが恐怖に繋がっているのが分離不安なのですから、犬や猫達の動物は、自分自身が飼い主さんの一部ではなく、独立した存在である事を知らなくてはなりませんし、飼い主さん以外の存在を認識してもらい、その存在と共存できるようになってもらう必要があります。
飼い主さんの意識が変わらない限り、犬や猫の意識も変えようがありませんし、また、飼い主さん以外にこれを実施できる者もおりません。
それだけの覚悟を飼い主さんに求める以上は、分離不安は心の病気として取り扱っても良いのではないかと私は考えます。

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