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動物愛護行政と狂犬病予防法
文章:パールちゃん 初出:2006/08/30 改訂:2006/12/6 改訂:2012/07/29

○動物愛護行政の仕組みを知ろう

日本の動物愛護行政の根幹は狂犬病予防法です。
「狂犬病予防法(厚生労働省)」は、人の生命・身体・財産が動物によって侵害されるのを防止し、生活の安全と公衆衛生の向上を目的としたものです。
動物が人に与える恩恵を考慮し、動物愛護の精神の高揚を図ることを目的に定められたのが「動物の愛護及び管理に関する法律(環境省)」です。
略して「動愛法」と呼ばれます。
動愛法を補足する形で「犬及び猫の飼養及び保管に関する基準(総理府告示)」があります。
さらに各都道府県がそれぞれ定めているいわゆるペット条例があります。
そして最も身近なものは全国各市町村が設けている飼い犬に関する規則で「○○市 犬の登録等に関する規則」といわれるものがあります。
このように、国や省庁が定めた法律・政令・規則、都道府県が定めた条例や規則、市町村が定めた条例や規則の3段階になっているのが動物愛護行政の仕組みです。

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○なぜ狂犬病予防法が動物愛護行政の根幹なのか

狂犬病予防法は人を守るための法律ですが、その底流には人と動物はどうつきあったらいいのかの示唆を含んでいます。
家畜としても愛玩用としても、人が生きていくうえで動物は切り離せない存在です。
人が安心して動物に接し、その恩恵を受けて共存していくための法律が狂犬病予防法です。
でも、数ある人獣共通伝染病のうち、なぜ狂犬病だけが取り上げられて予防のための独自の法律になったのでしょう。
それは、狂犬病がほかのどの病気よりも人に脅威を与えるからです。
狂犬病ウィルスは犬だけでなくほとんどの哺乳動物に感染します。
感染している動物に噛まれると傷口からウィルスが入り、そのままにしておくと1〜3ヵ月後には中枢神経が冒されて発症し、ほぼ100パーセント死に至ります。
発症を防ぐには噛まれたあとただちにワクチンの接種を受け、さらにその後の2ヶ月間に計6回のワクチン接種をします。
発症させない手立てをする以外になく、ひとたび発症してしまうと治療法はありません。

狂犬病は致死率が高く、また恐ろしい感染力をもった病気です。
日本では1957年以後患者の発生はありませんでしたが、1970年ネパールからの帰国者1名、2006年フィリピンからの帰国者2名が狂犬病を発症しました。
今でも世界の国々では毎年多くの人が狂犬病で亡くなっています。
発生がないのは日本と北欧3国とオセアニアの国々だけで、これ以外の世界中の地域では年間3万5000人から5万人が狂犬病で命を落としています。
死亡者の9割はアジア地域の人々です。

通常、狂犬病はヒトからヒトへ感染することはありませんが、狂犬病発生国から日本へこの病気に罹患した動物が入ってくることは考えられないことではありません。
犬の狂犬病予防注射接種率が7割以上ないと、いったんその国に感染動物が侵入すると感染拡大を防げないといわれています。
ところが日本の犬の狂犬病ワクチン接種率は合格ラインの7割に満たず、想定されている国内の犬の数の4〜5割しか予防注射を受けていないといわれています。
島国という環境のおかげと感染動物を検疫で食い止める水際作戦でどうにか国内発生を防いでいるのが現実ですが、裏を返せば、水際作戦で防ぎきれなかった場合、島国という環境ゆえに爆発的な感染を引き起こすことが想像されます。
そうなると何万何十万という単位での感染が予想され、大混乱は必至の状況になります。

船員が船に同乗させてきた飼い犬を検疫を受けずに上陸させたり、闇ルートで動物を輸入したりという事実は今もたくさんあります。
つまり、明日にも日本で1957年以来半世紀ぶりの狂犬病発生の可能性があるのです。
もしそうなってしまったとしても、国内全体でワクチン接種率が高まっていれば万が一に感染動物が侵入してきても感染の拡大を抑えることができます。
そのための最善策が毎年1回の狂犬病予防注射です。
このように、家畜・ペット含めすべての動物と人とが健全に共存するための根幹が狂犬病予防接種の義務を定めた狂犬病予防法であり、それが人と動物の関係を考えるうえでの国の指針となっているのです。

■参考資料
厚生労働省:狂犬病に関するQ&Aついて
厚生労働省:各市区町村において現在交付されている鑑札・注射済票の様式(デザイン)例

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