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エンセファリトゾーンの感染率
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2006/06/28

エンセファリトゾーンの感染率についての質問
紹介していただいたサイト(エンセファリトゾーン研究会)を読んでいて思ったのですが、斜頚・エンセの症状が出ていないウサギを検査しても、「感染有り」という結果が出ることがほとんどなんですよね?

エンセファリトゾーンの感染率についての回答
う〜ん、ちょっと誤解があるように感じたのですが、感染率が70%というのは、検査した頭数に対してなんです。この疾病の検査は、つい先日まで検査依頼すれば可能というものではなく、検査機関の方で試験的に実施していて、ようやく料金と受け入れ体制の目処がたったので、一般の動物病院にも開放されるようになったばかりです。

研究会の先生方は、その検査機関と連携をとっていたので、検査が実施できたということなのです。
検査している先生方が限定されていたのですから、当然、検査対象となったウサギ達もあるところ限定されたウサギ達です。
本来、日本には存在しないとされていた疾病が日本中に蔓延しているのではないかという理由は、地域的な偏りがなかったといことと、もう1点、代表的なウサギのブリーダーの飼育場がすでに汚染されていたからです。
すなわち、流通の出発点の時点で感染してしまっていれば、日本中の各地に感染ウサギがいきわたってしまっているのではないかと危惧されたことにあります。

要約してみますと、検査したウサギの70%がエンセファリトゾーンの原虫に接触してしまっている可能性が見られた、までが事実です。
日本中のウサギの70%が、というところからは、検査結果についての「考察」であって、この点はまだ事実として確認されたわけではありません。
統計的に処理するとしても2000とか3000とかいう検査のサンプル数が必要です。
「考察」自体が誤っているというのではなく、おそらくかなりの信憑性はあるのですが今の時点では、「日本のどこの街であっても、この疾病に遭遇してもおかしくないですよ」という理解になるのではないでしょうか。

この疾病の最終的な確定診断は、あくまでも病理解剖による「脳組織における原虫の確認」となります。
これはウサギが死んでからでないと実施できませんから、治療を前提として検査であれば、やはり血液検査からいくしかないのです。

自分のウサギがこの疾病に罹患しているか否かは、実に重要な点です。
斜頚=エンセファリトゾーンではありませんからね。
ここで70%という数字を仮に拝借して言い換えると斜頚を呈しているウサギの70%はエンセファリトゾーンかもしれませんが、残った30%にこの疾病の治療薬を投与しても効果がないということになりますし、それは世間では「誤診」と表現されることになりそうです。
検査結果が返ってくるまでの間に暫定的に治療薬を投与するのであれば、気がきく先生ということになりますが、そのまま、それ以上のことをしないのであれば、藪医者と呼ばれてもしかたないことになります。

で、もう1点大事な点がありまして、治療薬とされている薬剤は「抗生物質」ではありません、「駆虫薬」に相当します。
そして、国内では流通していません。
この疾病に取り組んでいる先生方が個人輸入によって入手しているのです。
費用と手間がかかっています、どこの病院でもいつでも手に入るというわけにはいきません。
まず間違いなくこの疾病であろうというウサギに対して優先的に投薬されるべきだと私は考えています。

一部のブリーダーやペットショップで、まとまった量で分与して欲しいという希望はあるやに耳にしていますが、本来であれば、ウサギの繁殖元や販売店が、オールインオールアウトで清浄化に取り組んでいただければ、一般の飼育者のもとへ感染ウサギが届いてしまうということもなくなるはずなのですが…。
これが実施してもらえれば、日本国内の推定70%という数字も、たちまち、0に近づくことになります。

簡単に入手できる薬でもないし、結構高いです。
推定70%だから、検査が無駄であるとは思えません。
斜頚を確認した時点で直ちに試験的に投薬することには、大いに賛成ですが、必要がないというか違う原因の斜頚にまで継続して投与することもないのです。
また、原虫によって、破壊された脳組織は再生がききません。
治療薬と称してもいても駆虫薬ですから、そこまでの効能はありません。
これ以上の破壊の進行をとどめるという役目なのです。
この治療薬の投与だけが治療ではありません、脳組織の温存や活性を高めるという処置も併せて実施されなくてはなりません。

■関連リンク:動物よくある質問ーウサギの斜頚とエンセファリトゾーン

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