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野兎病について
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2002/08/16

今夏(2002年)、アメリカの2つの輸入業者より約260頭の野兎病に感染した恐れのあるプレーリードックが我が国に輸入されたとの報道があり、厚生労働省において注意の呼び掛けと、輸入された個体の追跡調査が実施されています。

野兎病とは、なにも兎に限った疾病ではなく、人間にも他の動物にも広く感染します。
原因となる細菌が野うさぎと接触した人間から分離されたことに由来して、このような名称になっています。
原因菌は、Francisella tularensisという細菌でハタリスの間でペストに似た疾患として流行していたようです。
その後、この細菌は、分類がパスツレラ属に分類されたり、ブルセラ属に分類された経緯があるようです。
どちらの属においても、悪寒・高熱・吐き気・体の痛みを共通点としています。

とくにブルセラ属においてはBrucella melitensisに人間が感染すると「マルタ熱」と呼ばれ、非常に高熱が10〜14日の周期でくり返し「波状熱」として有名です。
この「マルタ」は地中海のマルタ島に由来しているので「地中海熱」とも呼称されます。

野兎病においては、人間の場合、3〜5日の潜伏期の後、この波状熱が突発し、先に挙げた症状の他に頭痛やリンパ節の腫脹や化膿・潰瘍を引き起こします。
動物においては、野ウサギや齧歯目の動物は感受性が高く、多くの場合、敗血症で死亡します。
もう少し、大形の動物になると発熱や運動障害、下痢、頻尿、流産、呼吸困難等が見られます。
診断については、感染動物からの菌の分離培養となります。
罹患している場合は血清中の中和抗体の検出が一般的ですが、抗原を所有していない検査機間では実施できません。
ブルセラ属の細菌とは、一部において共通抗原を所有しているとのことです。

プレーリードックは、先年、一部の群において「ペスト」の流行の危険性が指摘されたばかりですが、かの土地で害獣として捕獲された個体が、そのまま日本に輸入されてきていることが普通であり、また、この際に検疫も実施されていません。
人間で言えば、所謂「エマージングウイルス」と同じことであり、何が潜んでいるか分からないことがあります。
動物園では必ず隔離と検疫の期間を設けていますが、個人の飼育者では、この点が極めて曖昧となっています。
輸入された野生獣を飼育する者には、なお一層の注意深さが必要です。

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