獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199805-88

リプライ:犬の縫合糸 カラスの保護
投稿日 1998年5月11日(月)17時42分 プロキオン

5月10日のムクムク先生と5月11日の戸堂さんへ

私は非吸収糸派ですね。
縫合糸の場合、天然物の絹糸が組織の炎症反応が強く、ナイロン糸の方が
炎症が少ないと思います。吸収糸でもカットグッドのような素材ではやはり
炎症があると思います。この炎症反応によって糸の蛋白が分解されて吸収さ
れるわけですから、この炎症作用をまったくなくすというのは本来の目的と
相反することになります。かといって、あまりに炎症が強すぎたり、早期に
糸が結紮の役目を果たさなくなるのも問題です。
そこで、加工したり、合成吸収糸の登場となるわけです。ただ、この場合も
やはり生体にとっては異物であることにはかわりありません。したがって、
手術の目的や適応部位によって糸を使い分けることになります。
血管の結紮特に自由空間(体腔内)ではより強い結節の保持力が要求されま
すし、糸の量もわずかですので、私はナイロン糸を使用しています。
つまり、異物性よりも結紮の確実性が長期間続く方を優先しています。

戸堂さんの愛犬のように強い肉芽組織ができた症例では、糸の種類による原
因というよりも、別の原因があったと考える方が妥当だと思われます。
これは、戸堂さんの愛犬が特異体質と言っているわけではありません。もっと
単純な原因です。ムクムク先生には私のいう意味は理解して頂けると思います。
戸堂さんにはわけのわからないことを言って、すいません。


5月11日のレイさんへ

私も、以前は野鳥の診療もしていたのですが、今は断るようにしています。
それは、「野生動物の救護ハンドブック」を読んでからです。カラスも含め
て国内ではほとんどの鳥獣の捕獲飼育が禁止されており、この許可申請の
窓口も一本化されていません。法律上は医療目的でも例外ではありません。
運用面で一定の猶予が黙認されているのが実状なのです。
さらに、外傷や疾病にしても個々の個体を保護しても自然へ帰せることは
まれです。救命できても一生篭の鳥です。個々のデータが死蔵されてしま
います。そこで、自然界ではどのような事態が進行しており、鳥獣達に何
が起きているかを把握するために、全国的に統一されたフォーマットで記
録するべきだと考えるようになりました。そこで私は現在では県の鳥獣セ
ンターへ送りこむように指導しています。

レイさんの場合、県の担当部署が「野生ですので・・・」という返事との
ことですが、このような部署ではまず野生に返すことを基本としています
ので、上記の返事があっても不思議ではありません。当事者の間での状況
把握に差があったのでしょう。
(公務員にはあまりなじまない問題ですし、県によって差がありすぎる
 ことも事実ではりますが。)

具体的な救護方法は「野生動物救護獣医師会」がホームページを開いてい
ますので、そちらに問い合わせてみると良いでしょう。
なお、野生動物関係の講座をもっている先生の中には人間が介入することが
保護ではない、もっと生態系全体をとらえて考えなくてはという先生もおら
れます。

野生の鳥獣とのつきあい方というのも人それぞれですし、時とともに変化し
ていくのだ思います。今回のこともどちらが正しい・誤っているというわけ
でもないのでは?

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