獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-199911-86

猫の発情に出血が伴うか否か
投稿日 1999年11月13日(土)12時26分 プロキオン

11月11日のとぷかさんへ
質問へのレスということであれば、猫の発情には出血は伴われ
ません。つまり、発情出血はありません、

牛・馬・綿羊・山羊・豚・犬・猫、その他マウス・モルモット
等の実験動物などの繁殖が人間の管理下におかれている動物で
は性周期に伴う出血の有無はあるかないかは議論の余地はない
のではないでしょうか。
すでに人間との関係が数え切れないくらいの世代を経過してき
ていますし、これらの家畜や実験動物の交配や授精に伴ってど
のような発情徴候の時に実施するかは成書に記載されていると
ころです。

今回、とぷかさんの紹介された掲示板の中に猫に発情出血がな
いという理由を示せという意見もありましたが、これは逆です。
ないのが普通であって、出血が見られる場合の方に理由がある
のです。

一般的に、動物では性周期に伴う出血は見られないのが普通で
すが、上記の動物では牛が排卵直後に、犬が卵胞期に出血を伴
います。牛では卵巣の機能構造上からの理由です。犬では季節
発情動物で多胎妊娠を成立しやすくするため、子宮粘膜が過剰
に増殖するためです。
人間では妊娠非成立時における子宮粘膜の消退を待つよりも、
粘膜を崩壊させてしまった方が、次の妊娠の機会が早く招来す
るからです。
各動物によって、出血の意味あいも時期もことなりますし、そ
れを許す生態上や社会的な事情も必要になります。
つまり、集団追跡型の狩りをする犬の仲間では血の臭いをさせ
ていても大した障害にはなりませんが、単独待ち伏せ型の狩り
をする猫の仲間が血の臭いをさせていたら、狩りの成績は落ち
ると思われます。
このため、猫科の動物では繁殖効率をあげるために「交尾排卵」
という方法になっているわけです。

猫の生理帯が発売されているといのも理由にはなりません。犬
と猫をいっしょに考えている会社もありますし、なにより交尾
防止の視点が欠落して話をされているようですよ。
# 私は、猫の交尾防止にそれ程有効とも考えていませんが。

猫に発情出血があると主張されている方は医者に異常ないと言
われ猫はピンピンしているとか、本に猫の発情出血があると記
載されているとか言っていますが、これはどうでしょう・・・。
私には疑問です。

およそ獣医師でしたら、猫で陰部よりの出血と稟告を受けたら、
泌尿器系か生殖器系の疾患を疑うのが普通であると思います。
犬の場合でも、発情出血との鑑別を考えます。猫で「生理です
から心配ないです、異常ではありません」と答えるとは思えな
ません。本についても同様です。あると書いてしまったら、そ
の本は売れなくなるでしょうね。

雌猫の場合、膀胱炎になっても尿閉になりにくいので、出血を
発現していても結構元気に飛び回っていて、悪化してからでな
いと来院しないことも多いし、子宮蓄膿症も局所感染ですから、
やはり相当に膿みを溜め込んでからでないと気が付かないこと
もあります。
我が家の猫は特別で発情出血があるなどと考えずに、疾病の可
能性を考えた方が良いのです。せっかく忠告してくれた人がい
たのに追い出すような結果になっているのは残念なことです。

「ある」と主張されている方にはこちらでのレスを伝えても信
じては貰えないでしょうから、とぷかさんが理解されていれば
良いと私は考えます。
あえて伝えるなら、講談社から「ねこのお医者さん」という本
が出ています。赤坂動物病院の石田先生が書かれています。そ
の本の中の巻末の方でQ&Aのかたちで雌猫に生理はないとは
っきりと記載されています。195ページです。

本当はね、雌猫を飼育している人なら発情出血があるか否かは
皆知っているのです。それを言えなくなってしまっている状態
あるいは、言いかけているのに聞いて貰えない状態こそが問題
なのです。

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