獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200006-441

野良猫の避妊手術
投稿日 2000年6月29日(木)22時43分 岩谷

犬、猫を含む家畜は、長い年月をかけ、私たち人間が、野生動物を人間社会に
組み込んだ、その結果の動物です。
家畜は、野生動物とちがい、人為的に人間社会に組み込まれた存在ですから、
全面的に人間に依存して生きている動物です。
故に、私たちは、犬、猫の存在には、全面的に責任を負う義務があると思います。

家畜と、野生動物への私たちの対応の違いは、
前者は、人間社会が責任を持つべきであり、後者は、かけがえのない地球という
環境を共有すべき同等の立場にあるということと思います。

飼い主がいても、いなくても、犬、猫が好きであろうが、嫌いであろうが、
人であれば、多かれ少なかれ、犬、猫の存在に責任があるのではないでしょうか。
現行の社会制度では、公的機関(多くは保健所)が、犬、猫の処分を行っています。
公的機関が犬、猫の存在に介入せざるを得ないという事実が、紛れもなく、
犬、猫が公共的存在である証のように思えます。
(公的機関は、今後、犬、猫の処分から、保護へと移行していくことと思います。)

ベルさんの疑問は、
野良犬、野良猫をあたかも野生動物と同じに考えていることに、そもそも間違いが
あるのではないでしょうか。
野良犬であろうが、野良猫であろうが、犬、猫であれば、私たち人間が、その存在に
責任を持たなければなりません。

日本で、犬、猫を飼っていただける方達の割合は、全人口の30%程と聞きます。
これが60%程に増えたなら、地域猫の避妊手術も現状より減るかもしれません。
手術をしなくても、生まれた子達の命をどなたかが引き受けてくれるなら、
避妊手術はしなくてもよいものなのかもしれません。

しかし現実的には、犬、猫の命はあまりにもお粗末にされています。
また、野良猫の子供のもらい手を捜すのはとても困難です。
本来家庭犬、家庭猫であるのに、ストリート犬、猫として生きるのは、
犬、猫にとり、とても酷な人生です。
(一日中、餌を求めるだけの生活になります。)
せめて、生きる上で、負担を少しでも軽くしてあげたい、というのが、
飼い主のいない犬、猫に避妊手術をする基本的な理由なのではないでしょうか。
それは、現在では、私たちが、犬、猫にしてあげられる庇護、保護という責任の
一つの方法と私には思えます。

人間社会に組み込まれた存在の犬、猫の人生です。
私たちの社会が変われば、野良猫への避妊手術の考えも変わることと思います。

付記:きたむらひろこ様

ワンちゃんを引き取ってきたのですね。良かったですね。
大変な事もあるかと思いますが、がんばって下さい。
応援しています。

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