獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200204-72

ヘビ補足
投稿日 2002年4月8日(月)23時31分 はたの

獣医師ではありませんがご参考まで。

>その場所が、水辺の近くで背丈の高い草が生い茂っていて
>いかにも蛇の好みそうな場所なのです。

 ええと。これがそもそもあまり妥当ではありませんので・・・。
 ヘビといっても日本に住むだけで40種類ほどあり、本州に限っても10種ほどがいます。好む場所は種ごとにみな異なります。
 そして、その中で、水辺を好むものはたしかにありますが、みんながみんなじめじめしたところを好むわけではありません。背丈の高い草が生い茂っているところを特に好むとされる種はありません。

 比較的多くの種に共通する「好む場所」で、かつイヌと接触しやすいところを考えるのなら、この季節では、午前中の日溜まり、特に、交通量の少ないアスファルト・砂利などの路上になります。日光浴をしに出て来ています。

 が、大半のヘビは無毒ですから、イヌが咬まれてもまったく問題はありません。そしてイヌも、ノネズミやヒミズは熱心に狩る個体でも、ヘビにはためらうことが多いようなので、イヌがヘビを傷つける心配もあまりありません。昨夏生まれの仔ヘビだと少しはありそうですが。

 本州産有毒種2種のうち、ヤマカガシは比較的水辺を好みますが、イヌが咬まれる心配はほとんどありません。毒牙が口の奥にあるためです。首筋の皮下にも毒溜まりがあって、イヌがそこをかみ破ると、接触のリスクはあります。が、ヒキガエルの毒と類似したものなので、大きな危険ではありません。出会う確率からいえばヒキガエルのほうがずっと大きくなります。地域によりますが冬眠明けで産卵池に移動中ですし、イヌがためらわずにつついたり咥えたりしがちです。ただ、苦さのあまり口から泡吹くとか、しばらく味がわからなくなるといった程度なので、いずれにせよ、交通事故などにくらべれば無視して差し支えない程度のリスクと考えられます。

 マムシはやや心配ではあります。
 が、かなり希少ですので、出会う機会はごく稀です。また、背の高いくさむらや大きな水辺にはあまりおりません。
 パールちゃんさんが書かれている
>ビーグルサイズの犬がマムシに噛まれると、
>10分ほどで死に至ることがあります。
 は、「そういうことがある」という意味では間違いではないと思いますが、一般的な傾向でいえば、イヌはヒトよりもマムシ毒に耐性があります。非常に運が悪ければマムシに咬まれて死ぬこともありましょうが、野外で遊ばせるさいにあり得る他の危険要因に比べたら無視して差し支えない程度と考えられます。ヘビ警戒に注意力を取られるぶん、他の危険への監視がおろそかになるほうが、全体としての危険性はますと思われます。
 
 端的に申し上げると、ヘビのことは忘れて、それ以外に注意を払われることをお勧めします。他のイヌとか、捨ててあるゴミでケガするとか、ダニとか、自動車とか、崖から落ちるとか、迷子になるとか。

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