獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200309-81

RE:日本での未承認薬
投稿日 2003年9月9日(火)12時13分 プロキオン

すでに田口先生からレスがついておりますが、私からも違う観点で。

排尿中枢というのは、普通仙椎にあり(動物によっては腰椎にも)こちらの支
配を受けています。
そして神経性の排尿障害にもおおまかに言って、次の3つに大別されます。

1、弛緩性または下位運動性
  膀胱は弛緩し、圧迫すると容易に排尿でき、持続性の尿失禁や滴下を伴う
  ものであり、早く言えば麻痺です。
2、自動性または上位運動性
  膀胱は膨らみ、圧迫しても排尿は容易ではなく、括約筋の緊張が亢進して
  いるものです。麻痺とは逆の亢進です。
3、膀胱と尿道の共同運動障害
  膀胱が排尿しようとして収縮するのに対して、尿道が弛緩せずに逆に緊張
  して尿の流出をさまたげるものです。この場合、脊髄反射は正常に働いて
  いるようです。

1の例では、排尿中枢もしくはそれ以下に原因があることになり、2の例では
排尿中枢よりも上の神経に異常が生じていることになります。
(2の場合、大きく膨らんだ膀胱と後躯の不全麻痺または完全麻痺が特徴とな
ります。つまり、私のところの猫と同じです。)
ただし、3の場合は排尿中枢には問題はないのです。

元の投稿に記載されている「フェノキシベンザミン」は、この3の膀胱と尿道
の共同運動障害の例で使用される「αアドレナリン作動遮断薬」になります。

お書きになられている記述では、脊髄に障害があって排尿困難になっているよ
うに私には受け取れたのですが、排尿障害の原因については、1なのでしょう
か2なのでしょか?
1であれば、実際には「排尿障害」という単語とは結びつきにくいので、想像
するには2の場合のように受け取れます。
2の場合ですと、フェノキシベンザミンは治療薬ではありません。「排尿中枢
」を抑制してしまっているより上位の神経に働く薬ではないからです。
しかしながら、そうはいっても臨床の場では使用されている例も多々あるかと
思います。症状の緩和には有効性があると考えられるからです。

なにが言いたいのかと言うと、治療薬だと思って、個人輸入によって漫然と投
薬を続けるには問題があるのではないかということなのです。
本来の適応症例とは異なるのですから、獣医師の目の届く範囲での使用が望ま
れるのではないかということです。
田口先生が教えて下さっている薬品も同じ作用に分類されますので、私として
も、動物病院へ通院しながら、そちらのお薬を使用することの方がよいのでは
ないかと思います。

さらに言及すれば、2の症例の場合でも神経以外の原因で排尿障害が進みます
。私のところの猫などその良い例で、後躯麻痺で下半身を引きずっているため
に しばしば垂れ流しや排尿不全を起こします。これらは、膀胱炎や尿道炎に
由来しています。
1つの原因や1つの薬が、疾病の全てではありません。1つの峠を越えても、
また違う峠があるかもしれません。そのときどきにおいて動物病院は、よき相
談相手でありたいと思います。
そういう意味からも あまり1人で責任を背負い込まずに動物病院を利用され
ると良いように思います。


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