獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200405-210

>陰睾丸について
投稿日 2004年5月18日(火)04時12分 投稿者 わたらい

こんにちは。
ほとんど大勢の子イヌで、精巣下降は生後早い時期(生後1ヶ月程度)に起きる事になっております。
この頃には陰睾丸(停留精巣)であるか否か触診で区別できますが、生後6ヶ月程度までに降りてくるケースもあります。
僕の病院では42日齢になるとワクチンのために子イヌを連れてくるブリーダーさんがおられますが、この際の身体検査で停留精巣のあるなしについてチェックし、先方に伝えるようにしております。
つまり「将来精巣が降りてこない事がある事を納得して購入してもらうか、売らずに様子を見ておいて欲しい(降りたら売る)」という事を伝えるわけです。

面白いエピソードを一つ。
停留精巣は、いわゆる展覧会、品評会では失格です。
遺伝する事があり、良い血統を残していこうとする会の趣旨にそぐわないというのが理由のようです。
失格では困るモノですから、中には美容整形よろしくシリコンの玉などを手術で陰嚢に埋めてしまう事があるそうですが・・・
「玉が3つあるイヌがいた」そうで、僕の所に出入りしているブリーダーさんは「インチキだ」などとおっしゃっていました。
つまり、幼犬の部に出品した頃にはソレでごまかしが出来ていたらしいのですが、成長につれて体が出来てくると本来の精巣が「降りてしまった」らしいのです。
一応失格にはならなかったらしいのですが、赤っ恥青っ恥というやつで随分小さくなっていたとか何とか・・・

停留精巣は、放置しておきますと正常に比べて腫瘍化する事が多いと言われます(13倍くらい?)。
精巣が異常に大きくなったり(逆に小さくなったり)すれば「おかしい」という事で手術になるのですが、何らかの身体的な異常(発熱や貧血など)が出てからの発見になると、ほんの数日で亡くなってしまうケースまでありますから、予防的に早い段階で見切りをつけて手術してしまうようにしております。
この異常のある雄イヌは、どうかすると通常の雄イヌよりも雄性行動(攻撃性、マーキングなど)が強くなるケースがあるようで、大人にしてからでは飼い主さんが病院に連れてくる事がままならない場合があるようです。
そのため、ワクチン接種のために来院された子イヌで異常を発見した場合、子イヌの間(生後3ヶ月〜5ヶ月頃まで)に手術を薦める事もしております。

今回の件、異常を発見できてもよさそうなハードルは2つあったと思うのですが、一つは子イヌを売ったペットショップ(その大本のブリーダー)、もう一つは(飼い始めた時点で病院に行ってると思うのですが)子イヌを診察した獣医師です。
これだけのフィルターをすり抜けて3年近くも異常に気がつかなかったという事ですので、まあ、ちょっと仕方がないのかなあ、と思ったりもいたします。

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