獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200408-146

再び、とめきさんへ
投稿日 2004年8月11日(水)12時21分 投稿者 プロキオン

承知の上とは言え、きついことを言って、申し訳ありませんでした。

この掲示板でも過去何度も大学受験に失敗された方が、海外の大学で獣医
師資格をとりたいという相談がくり返しされてきた経緯があります。
実際のところ、それはあまりにも現実離れした考えであり、現地へ行きさ
えすればなんとかなるという安易なものでした。
他の先生達も、それを知っているからこそ心配されていたということにな
るのだと思います。

とめきさんのケースでは、大学入学後にアメリカ留学希望だったので、日
本の大学の授業では役に立たないので、アメリカでの勉強に意義を求めて
いるのかなと感じた次第です。
私の同級生の中にも、授業や実習はすべて二の次で、自分は小動物の診療
の道に就くからという理由で、大学の外に勉強の場を求めていた者もおり
ました。

ただ、解剖、生理、病理だの微生物だの、伝染病学だって、基礎分野にお
いては、臨床先ではダメなんです。必要だからこそ講議も実習もあるので
す。基礎のない人間が、小手先でワクチンを接種しても理屈が理解できて
いなければ、ワクチンブレイクをおこしかねません。獣医師がワクチンを
接種するという行為は、「注射する行為ではなく、キチンと免疫を付与す
る」ことを意味します。
基礎のないところに家を建ててはなりません。空中楼閣に憧れてもいけま
せん。
日本の獣医療は、大学の教育だけではまことに不完全なのです。むしろ、
大学は基礎学問の場と割り切って考えた方が良いと私は思います。大学を
卒業して、臨床の分野に進んだ者の多くもまたとめきさんのように海外の
獣医療に興味を抱いています。
しかし、毎日現場で繰り広げられている診療においては、初めて遭遇する
ことばかりで、目が白黒です。憶えなければならないこと、学ばなければ
ならないことばかりなのです。
それが、現実の姿なのですから、大学生の時点での留学に意味があるのか
という危惧を感じた次第です。

これは、別段とめきさんのせいばかりとは、私も思っておりません。マス
コミ等の報道のせいも相当にあると考えています。
マスコミは良い部分だけ放映するんです。また、さらに演出もあります。
ある番組で吠える犬の矯正方法を放送した後、骨折事故が多発したり、名
医と紹介された先生が裏でよからぬことをしていたりとか。
欧米の先進医療というのも、これと同様であって、マスコミが注目するく
らいのものであるのなら、獣医師も当然それを承知しています。導入可能
なものであれば、第三者に紹介してもらうことを待っている必要はありま
せん。
導入できないものというのは、費用の問題、システムの問題、人材等の問
題があるからとことになります。この中で、人材の問題という時に「私が
かの地で直接勉強してくる」と手を挙げてくれる獣医師がいてくれれば、
それは日本中の獣医師が持ち望んでいてくれるということになります。
ですから、留学そのものを否定しているわけではないのです。みんなに必
要とされるものを学んできて欲しいのです。

アメリカ留学というのは、お金も時間も必要なことです。留学先から、自
分が持ち帰ってくるものが、ただの「箔付け」なのか、真に必要とされて
いるものなのかで、その獣医師の評価も大きく異なります。
私達臨床分野の開業医というのも、新しい技術や知見というのに、常に気
を配っているものです。10年一律同じ診療でよいと考えている者は1人
もおりません。そうでなければ、やっていけないのです。常に継続して勉
強することが、この仕事を支えているのです。
ですから、「偽者」は裏で軽蔑されるだけなのです。本当の意味での留学
を果した者のみが歓迎されるのです。
# その意味では知識の1人占めは、できないのですが。

何も知らないでの憧れもあり、現実に押しつぶされる憧れもあり、それで
もなお止む事のない憧れもあり… です。

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