獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200502-23

マルチレス
投稿日 2005年2月4日(金)17時29分 投稿者 プロキオン

2月2日の かかさんへ
疾病の病原体を媒介することについえは、「キャリアー」と「レゼルボ
ア」がありますが、今回の御質問は単に「病原体の媒介」という意味で
理解してよろしいですよね。
記載された疾病については、それぞれの特性がありますので、一概には
申せないのですが、原則として、本人の持っている免疫力と侵襲してく
る病原体の毒力とその暴露量によって決まります。
病原体が体内に侵入しても発病せずに病原体を排泄しつづけていれば、
それは所謂「キャリアー」でしょう。免疫力が弱くて発病してしまえば、
病原体を持ち運ぶどころではないのですが、飼い主さんがその排泄物を
消毒しないで衣服に付着させていれば、飼い主さんを介しての「キャリ
アー」にもなりえます。
それぞれの病原体の野外環境内における生存率が、異なりますので、要
注意の期間もまた異なります。
また、ワクチンは正しい時期に適切な量を接種することが、とても大切
であって、幼弱な動物の場合では、免疫が充分に獲得できなかったり、
ワクチン内の病原体を消化管等から排泄したりする現象があります。
正しくワクチンを接種することで、キャリアーとなる可能性はほとんど
なくなるはずです。
お聞きになりたかった内容については、残念ながら統計的な調査は実施
されていないと思います。



2月3日の ねこママさんへ
猫は犬と比較して、血糖値のコントロールが大変に難しい動物です。な
かなか血糖値が下がらないのに、いきなり低血糖状態に陥って危険な状
態となることがあります。
血便についてなのですが、これは私もインスリンのせいではないと想像
します。むしろ、インスリンによるコントロールがまだ不十分なように
思われます。これは現在の治療されている先生の腕が悪いというのでは
なく、猫がそういう動物なのです。
で、糖尿病ですが、この疾病の本態が「血糖による血管内皮細胞の破壊
」なのです。血糖そのものが持続的に血管に作用しつづけると血管の内
皮細胞が壊されていくのです。だから、肝臓において形態をかえて筋肉
や脂等に貯蔵して遊離しないようにしているのです。
人間の糖尿病においても「眼底出血」「食道静脈瘤」とか、「下肢の血
栓による壊疽」とかがあるでしょう。これらは、みんな高すぎる血糖が
持続的に作用した結果と言えます。
したがいまして、血便という症状も糖尿病の履歴があれば、私には不思
議ではありません。おそらく粘膜に分布する血管が荒れているのでしょ
うし、血便でなく「痔」のような形で現れてても納得できますし、血尿
があっても不思議ではありません。
インスリンが原因というよりは、糖尿病がそういう状態にあると考えて
いただいた方が理屈に合いそうです。

また、口内炎におけるステロイド剤についてですが、他の方のレスにあ
りますように確かに長期間の投与は医原性の糖尿病の発現につながる可
能性は存在しています。
ただ、やはりこの薬剤は疼痛を抑制する、そして食事がとれるという上
で最も効果的であろうと私は思いますし、その使用にためらいはありま
せん。患者さんにもこの点は説明するのですが、「先にどうなるかより
も、今食べる事ができる方が大事ですから」とどちらの方が獣医師かわ
からないような返答が返ってきたことがあります。この飼い主さんの猫
は3年近く投与しましたが、そのような問題は発生しませんでしたし、
他の猫においても私の病院では、ステロイドによる医原性糖尿病が発生
したことはありません。
抗生物質や消炎剤の併用で、ステロイドの投薬をできるかぎりあけるよ
うにするということだと思います。当然、他の薬剤もかなり選んでいま
す。
インターフェロン入りの歯磨きというのも、おそらくは調合薬だと思い
ます。市販製品には該当はないと思います。口内炎については、カリシ
ウイルスがある程度影響を与えているとする説もありますので、インタ
ーフェロンの効果も期待してよろしいかと考えます。
と、同時に抜歯処置によって口腔内の疼痛が著しく緩和されて炎症も改
善されるという報告もあります。
さまざまな治療報告があっても、決定打がどれかというと、まだわかり
ません。
糖尿病も、口内炎も、どちらも猫においてはやっかいな疾病です。


2月3日の 「降圧剤とセタブリル」
症状が発現していないのに服用すべきかという質問ですが、欧米であれ
ばむしろ当たり前のことと返ってくると思います。
これらの心臓疾患というと、自然に治癒することはないのです。
だからこそ、早めに服用することによって症状の発現する時期をより先
へ伸ばそうという理屈なのです。症状が発現するようになったのなら、
今度は服用する量を増やすということになります。この繰り返しなので
す。
ただ、この原理が理解されておりませんと、なんだ薬なんて意味がない
ということになって、途中で服用を中断してしまう飼い主さんもしばし
ばおりまして、薬の中断で心臓への負担をかえって大きくしてしまうと
いう事態にも遭遇します。
ですから、「服用を始めてたら、かってに中断しないでください」は、
かなり念押しをします。それでも中止してしまう飼い主さんは多いです。
犬に症状が発現して咳き込んだりしているのを確認していたりすると、
たしかに服用は継続してくれるようです。
この辺は、痛し痒しです。私のところでは、そこまで飼い主さんに説明
して「いつから服用するか」は、飼い主さんに決めてもらっています。
医学的には、どちらが望ましいのかはハッキリとしています。が、しか
し、中断されてしまうのよりは、ましでしょうし、それもまた「インフ
ォームドコンセント」です。
症状が発現したのにもかかわらずに、薬をとりに来院しなかったら、そ
れは犬の不運としか言い様がありませんが。


2月4日の ちなつさんへ
私にはお答えすべき知見がありませので、レスすることができません。


2月4日の ヨウスケさんへ
猫の先天性脳障害についえですが、
(1)このままでよいのですか?
  これは第三者に尋ねるべき質問ではありません。そのままで良いと
  考える方はいないと思います。
(2)治す方はありますか?
  治療方法云々の前に何故そういうことが発生したのか、今の状況の
  把握が必要です。
  なにがなんだか分からない状況で、治るか治らないかは答えようが
  ないと思います。 
 
今、お書きになっているのは、症状であって、特定の病気についてでは
ありません。先天性の脳障害というのは、状態を表現した言葉であって
そこから、先のことは現状では分かりかねます。

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