獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200604-2

re: レントゲンで分かること?
投稿日 2006年4月1日(土)12時23分 投稿者 プロキオン

ご存知だと思いますが、頭蓋骨は1つの骨で構成されているわけではありませんので、
これに「ヒビ」があるを云々してもしかたありません。まして、それが火葬場での焼い
た後の骨であれば、法医学をもってしても容易に「外傷性」か否かは判断できないはず
です。

当初の時点に戻って、預かりから帰宅する朝「痙攣」を発症して、2日後に動物病院で
「血液検査の数値があがっているから、脳炎かも。頭蓋骨にヒビのようなものがレント
ゲンでうつっているから、外傷性の可能性も」ということでしたよね。
この上昇していた血液検査の数値が何かということも参考になったかもしれませんね。
その後の投稿では肝機能値は上がっていないとありましたが、炎症ということであれば
白血球が上昇していたというこなのでしょうか?
頭部組織においては、頭蓋骨の上に薄い皮筋があって、その上に皮膚がありますから、
痙攣を起こす程の衝撃が加えられたのであれば、それなりの打撲痕や皮下や頭蓋骨内の
出血があり、皮膚が腫脹しているはずです。(頭蓋骨だけを選んで衝撃を加えることは
できませんので)
頭蓋骨内であれば、硬膜下とかクモ膜下の出血ということになり、この血腫による脳実
質の圧迫によって、意識障害や意識の混濁が生じるわけです。
つまり、ホテルで預かりの最中に頭部に衝撃が加えられているのであれば、これらの変
化はレントゲンに写っていてもおかしくはないでしょうね。
交通事故で頭部を打ったという場合でも、打撲当初においては、このような変状は写っ
ておらず、経時的な変化として、ある程度の時間が経過して確認できるようになるはず
です。ですから、何部組織の変化が何ら認められないという可能性もないわけではあり
ませんが、すでに痙攣が出ているのであれば、「ヒビ」以外の変化もあると考えるのが
一般的と言えるのではないでしょうか。
もし、本当に頭蓋骨の「ヒビ」だけの所見であれば、それは過去のものと解釈するべき
と病理学を学んだ者としては考えます。
従いまして、経営者さんが、その時のレントゲンを見たいというお気持ちは充分に理解
できます。
が、しかし、それはかなわないことと思います。レントゲンの所属は診察した獣医師に
ありますので、その説明を受ける権利も飼い主さんということになります。第三者に閲
覧・開示しなくてはならないものではありません。
3月14日の時点で、けりーずはうす先生や田舎の獣医さんが、大学病院へと発言され
たのも、そこに第三者でも検証可能な診断を確保しておく意味がありました。
私見となりますが、大学病院でMRIを撮影しておけば、脳内における「脳炎」の発生
している部位も特定できたでしょうし、他に予測できる可能性というのもさぐることが
できたのではないかと想像します。

主治医からレントゲンフィルムの提出を受けて、他の獣医師に読影を依頼するというの
には、やはり裁判のような手続きが必要と考えられます。ただ、直接的な被害者として
裁判所に認定してもらうには困難なケースだと私には思えます。
また、再度の投稿の際にも主治医も断定していたわけではない旨の記載がありましたよ
ね。むしろ、そういう意図はなかったということになれば、終始もつかなくなりますし、
結論も得られないのではないでしょうか?

レントゲンで分かることもありますし、写っていても読み落とされることもあります。
物理的に存在していても写らない大きさの変化もあります。
まして、それぞれの人間の感情や諸般の事情というのも、記録できようはずもありませ
ん。1枚のレントゲンフィルムに納めきれないお話になりつつあるなと感じています。

私は、ペットホテルはやらない方針でいます。一見健康そうに見えていても何があるか
分からないからです。飼い主が健康だと信じ込んでいた犬が、突然倒れてそれきり起き
上がれなくなるという症例も、当地ではしばしば遭遇します。(3月下旬にもあったば
かりです)
学生時代も、県の病勢鑑定担当だった時も、開業してからも、健康だった犬が突然死亡
した、毒殺ではないかと検査を依頼されたことがあります。甚急性の経過をとるという
ことは動物にはあるのです。健康そうに見える動物でなければ、このようなこともなか
ったと思います。
飼い主さんが、「健康」だと思い込んでいることも、じつによくあることなのです。
事態が急変した際に検証するのであれば、こちらも飼い主さんも双方が納得できる機関
においてでなければなりません。この点が重要なのです。

ペットホテルに宿泊中に痙攣が起きたのであれば、飼い主さんの気持ちとしては、そう
いう流れになるのは、不自然ではありません。だからこそ、禍根を残さないための対応
が必要になるのだと思います。
レスしてくださった先生方は、必要不可欠なアドバイスをしてくださっていたと思いま
す。
真実は1つなのでしょうが、写真に写った事実には何通りかの事実がありえます。レン
トゲンで何が分かるかではなく、揺れ動いている飼い主さんの気持ちの問題なのではな
いのでしょうか。

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