獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200608-259

あえて
投稿日 2006年8月25日(金)22時27分 投稿者 はたの

個人的には、避妊去勢は仔猫殺しよりはるかによいと思う、という点、いくつかの書き込みに同感します。

 しかし、しかしですね。我田引水だろうと古いロジックであろうと、自己満足宣伝欲と思われようと、「相手にしない方がいい」「議論するまでもない」といった門前払いな排除には危険を感じます。

 法理論については別ですよ。法についてはただ適用されればよい。ある行為がそこを支配している法に反したら処罰されるのは当然ですが、処罰されるリスクを覚悟の上でその行為を行うことは禁じ得ません。この原則があるからこそ、大津事件で日本は法治国家として認められたわけであり、近年の英米の法運用に疑問が呈されているわけです。
 しかしまあ、仔猫殺しが違法なら処罰されればすむのであって、それ以上でもそれ以下でもありません。

 私が怖いと思うのは、「それが当然」「それが常識」という感覚です。だから、門前払い式の切り捨て、議論拒否が怖いのです。
 「避妊去勢は仔猫殺しより良い」という考えが長いスパンで見たときに妥当である、という保証はありません。少し前の考えを受けて発展し、少し後の考えに受け継がれる存在であるという保証はありません。一時の流行、あだ花でないとはいえないのです。
 みんながいうから、というのはアテになりません。近年では日本の土地バブルがあり、昔はオランダでチューリップバブルもありました。枢軸3国のファシズムにしたって、圧倒的な国民の支持があってこそ、です。今から見ればナンセンスにアメリカの禁酒法だって、その時その場所では支持されたからこそ成立したわけで(近年はもとより、マッカーシズムを考えても、アメリカという国はこの点脇が甘いといえるでしょうが)。
 「その時、その場所」にいる人間には、「その時、その場所」で支配的な言説が「それ以外の時、それ以外の場所」から見ても妥当なものかは判断できはないわけです。
 だからこそ、それは当然、論ずるまでもない、と私たちが思う価値観であるところの「避妊去勢は仔猫殺しよりマシ」を得手あえてあえ疑ってみる必要があります。そして、受け手が不愉快になろうとも、非難されようとも、そうした「常識への挑戦」をすることが、モノカキなりブンガクシャなりの存在意義でもあります。
 
 一読気にくわない、という情緒的な反応がいけないとはいえません。私もそう感じました。
 しかし、そう感じた、ということは、だからといって、切り捨てていいという ことにはなりません。
 ファシズムは狭く訳せば全体主義的軍国主義になりますが、広く訳せば、御輿はなんであれ全体主義、といえます。環境ファシズム、人権ファシズム、アニマルライツ/アニマルフェルフェアファシズム、いずれも成立し得ます。
 議論を拒否するのがその第一歩です。
 「君の意見には反対だが、君がその意見を言明する権利があることには賛同する」というのがファシズム回避へのひとつの提案ですね。

 板東さんと同じ前提から異なる結論(堕胎はいうまでもなく、避妊去勢もダメ)と考える人々も少なくない、ということに思いをはせるべきでしょうし、そうなれば(感情的に気に入るか気にくわないかは別として)板東理論を門前払いしていいとはいえない、と思わざるを得なくなります。
 自己欺瞞によって偽善を見逃していたのではいいだろうか、と不安になってしかるべきでしょう。
 「なぜ、避妊去勢は良く仔猫殺しはいけないのか」を、感情以外で説明するのって、結構難しいと思います。ネグってすませていいことでもありますまい。

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