獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200711-41

Re:猫の乳腺腫瘍
投稿日 2007年11月13日(火)16時26分 投稿者 プロキオン

昨夜に帰宅しました。

>頭や背中の骨が数ヵ所出っ張っていたり、顔や前足や首の後ろにイボのような物ができています。

乳腺腫瘍であれば、私の経験の中からは、骨への転移はないように思います。顔や前足にもあまり見聞きしておりませんが、リンパ節への転移ということなのでしょうか? ちょっと確認してみないと分かりかねます。乳腺の細胞は、「上皮系細胞」であって、リンパ節の細胞は「非上皮系の細胞」ということになりますので、細胞診断のレベルから行くと
さほど困難ではないので、鑑別は可能なように考えます。

>顔と前足のは、気になっていじってしまう為か潰れて出血しています。これらは癌に伴う物なのでしょうか?

診察してみないと、分かりかねます。

>また、横になって寝なくなりました。肺に水が溜まっているのでしょうか?もしそうなら、薬とか水を抜くとかで楽になりますか?

こちらは、レントゲンの診断が必要です。肺胞の中に水が溜まっているのであれば、内科的に尿として排泄した方が良いと思います。肺の実質ではなく、胸腔内に水がたまっているということであれば、注射針やドレーンで直接抜くのが話は早いのですが、ショックを誘起させないように慎重に実施する必要があります。
まず、胸水がどこに溜まっているかと、出現している細胞が炎症性の細胞か腫瘍細胞であるかを確認してからの方がよいでしょう。
胸水自体は、抜けるものなら抜いた方が呼吸は楽になると考えられます。ただ、決して無理に抜くということでもありません。
胸水の場合、姿勢によって、呼吸の様子に違いがでるということはあると思います。

>ここ数日ろくに食べていないようです。水は飲みますが、( 中略 )食べなくなったら、もう覚悟しなくてはと思っていましたが、カツブシは食べる…だからと言って

この時点に至っては、私は何は良くて何は駄目ということはあまり言ったことはありません。まず、何よりも口から食べることが大事と考えておりますので。
ただし、これは私の個人的な考えであって、主治医の先生の考えを優先していただかなくてはなりません。

>どなたか『食欲が無くてもコレなら食べた』という物があれば教えて下さい。

やはり、好みに差があるようですから、いろいろ試みるしかないと思いますが、私もどなたか他の方からも意見がいただけると良いと思っています。


>水を飲む時は手前で一旦休んでから、トイレに入っても中でしばらく休んでから用を足しています。ちょっと歩いただけで呼吸が荒くなります。もう何をしても無駄かもしれませんが、なるべく苦しまないで天国に行けるよう、何か出来る事があればしてあげたいのです。

相当に消耗が進んでいて衰弱しているようですね。
長女が保育園の頃だったか、テレビのアフリカものである女優さんがレポーターになっていました。インパラの子供がライオンに襲われて、首を咬まれて死に掛けている映像がありました。女優さんは、「自分には助けてあげることができない、何もできない。」と言ってインパラの子供の前で涙を流して泣いておられました。
その時に、長女が「お父さんなら、助けることできる?」といきなり尋ねてきました。「あの傷はひどいから助けることはできないかもしれない。でも、お父さんなら、道具も薬も無い状態でも、何もなくても、両手で傷を押さえて血をとめようとするよ。」と答えました。長女は、それを聞いて納得してくれたようでした。いや、本当に即答できてよかったと後から思いましたね。時間をおいてからの返事だと、納得してもらえなかったかもしれません。長女はそれ以前からも大人をドキッとさせるようなことを言うところがあったので、「お父さん」になるのも大変でした。
今、みっちゃんが「何かできる事」というのは、具体的な指示というのはあまり意味がないように思います。人それぞれにできる事とできない事があります。獣医師である私が考えることと、飼い主であるみっちゃんができる事が同じである必要はありません。
私が何をどうするということよりも、みっちゃんが傍に居て、声をかけて撫ぜてあげることの方が当事者である猫にとっては、ありがたいことでしょうし、その方が気持ちもおさまると思います。
「死の恐怖、病の苦しみ、老いの悲しみ」これらの煩悩の最たるものに対して、医療を超えたところにあるものには、「心」でせっするしかないように考えています。みっちゃんが傍に居て、猫のことを思う気持ちこそが、もっとも大切なものなのです。それを上回る獣医療を私は持ちえておりません。また、それで良いのだと考えております。

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