獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200812-48

Re:腎不全の猫
投稿日 2008年12月19日(金)11時17分 投稿者 プロキオン

>この「尿毒症の末期」とは、どのような症状、検査結果のことを指すのかご指南いただければ幸いです。

これは特定の症状や検査数値を示してのものではありません。患者自身の状態と併せて判断しますし、例え同じ患者についてであっても獣医師によって見解が異なることもあります。10人の獣医師が診察して7〜8人がそのように判断したのであれば、客観的な判断に相当すると思います。

>そのACE阻害剤についてお聞きしたいのですが、その薬の使用上の注意のところに
「慢性腎不全の尿毒症末期及び急性腎不全の症例に対して本剤投与による効果は確認されていないため、本剤の投与は避けること。」と書かれていました。

「播種性血管内凝固症候群」と呼ばれる状態が全身におきることがあります。血管で血液の凝固がおきたり、あるいは別の場所では出血が同時に発生していたりします。片方で凝固した血液を溶解させる反応がおきているのに関わらず、他方では出血を止めるために血液の凝固物質が輸送されていたりします。血栓を溶かすための物質が分泌されて、出血しやすくなる。そのためにまた凝固物質が必要となるという悪循環が発生して治療がむずかしくなるということとなります。
なにが言いたいのかと言うと、生体の中でおきる疾病の事象は、必ずしも一元的な治療で済むということでもなく、複合的な要因や上記のようなケースで、相反する治療を求められることもしばしば起こり得ます。ACE阻害剤における服用の適否というのも、すでにこの掲示板で犬の腎不全で何回か質問が出てきております。この薬自体は、信用に足るかなりよい薬剤であると私は考えております。
しかし、ACE阻害剤の薬理説明の中でもよく言及されておりますが、腎不全そのものが進行して悪循環をおこすものであって、末期においてこの薬剤の効能効果が著しく減じて感じられることもあると思いますし、この薬剤と禁忌である別の薬剤の作用も必要とする事態も当然ながらあります。
薬効が減じているように感じられた際に、投薬量を増加させたり、同種の別の薬に変更したり、あるいは、まったく他の薬剤の力を借りるとか、かかる治療方針については、主治医の判断が尊重されます。
ビリーさんは、末期であって効果が無いのであれば、説明書の記載どうりに止めるべきではないのかという御質問であると推察しますが、第三者的には、「説明書の字句については、そのとおりですね。」までしか述べる事ができません。患者自身については、どうなのかという個別問題となると、患者を直接診察する必要があります。
ですから、ビリーさんが疑問に感じた点は、直接主治医の先生に伝えられたら良いと思います。病状の説明と治療方針については、飼い主さんと主治医で逐次話し合われていかれることこそが望ましいことではないかと考えます。

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