獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200906-67

Re:動物と人・獣医師とのトラブル回避の方法
投稿日 2009年6月24日(水)00時48分 投稿者 チーママ

一飼い主として、そんな場があったらいいな、とは思います。本当に医療過誤があったなら、それをきちんと正してお詫びが欲しいと願うのが飼い主だからです。私も過去に医療ミスでなくした命もあります。それを真正面から受け止めてお詫びをしてくださった獣医さんに、心が救われたことも事実です。(もっとも、飼い主以上に獣医さんの方が、あとを引いていらっしゃいましたが)
おそらくそれは、人医療となんら変わらないと思います。

ただ実情として、いかんせん人医療ほど獣医療が進んでいないのも確かです。一方、昨日までの常識が、明日には古くなり新しい方法が取って代わる事も、珍しい事ではありません。ともあれ難しい事は分かりませんし、文章力があるわけでもありませんので、一例として自分の経験をお話してみます。

ある時、まだまだ若いウサギを亡くしました。
調子を崩したあと持ち直してきたところで、急変にあわてました。
危険な状態になった時にかかりつけに連絡したところ「その状態ではこちらまで持たないだろう。近くの病院で緊急対処してもらいなさい」と言う事でしたので、やはり評判が良く有名で、以前にもお世話になった病院へ駆け込み診て頂きました。
正直言いまして、その時の処置は飼い主として「? 診立てが違うだろう?」のものでしたが、内心「これは普通ではない。もうダメだろう」と言う思いもあり、お任せしました。結局そこで看取る事になりました。
死因に対しても「体力が持たなかった」との見解でしたが、どうしてもそうではないと思い、かかりつけ医に連絡し剖検していただきました。
回復基調になっていただけに、かかりつけ医も死因が知りたかったのだと思います。「剖検しても、ほとんどの場合死因は分からない事が多いですよ。それでもと言うなら、時間がたつとますます分かりにくくなりますから」と言う事で夜分遅くになりましたが、剖検してくださいました。
結果は「胃破裂」。本当に小さな傷だったそうです。しかし時間と共に…ということだったようです。「これは飛行機事故くらいの確率です。これで助かった事はありません。」
とのことでした。原因が分かった時に、先生たちと飼い主との間に、ホッとした空気が流れた事が、今でも印象に残っています。飼い主としては、こればかりはどんな名医でも致し方ないと思い、主治医にしては死因が分かって飼い主も納得出来ただろうという安堵感だったと思います。もちろん直前の治療が効を奏していたことも確認できた安堵感もあるでしょうが。(その後看取ってくださった獣医さんにもお知らせしました。本当によい獣医さんですので、死因を知りたかっただろうと思いましたので。)

いったいに、ペットの飼い主は剖検を致しません。剖検をしなければ、我が家のような例でも「ウサギに良くあるうっ滞が進行して、亡くなった」と、一番良くある結論で終わっていたはずです。本当にそうだろうか?と飼い主が思っても、それを証明するすべはありません。そして「あの時あの緊急処置は正しかったのか?いつものかかりつけの先生ならすることも、あの先生はしなかった。」と、飼い主によっては懐疑の目を向けるかもしれません。
そこでトラブルになっても、剖検をしていなければ死因の特定は難しく、論議はあくまでも「if」の応酬でしかないのです。
どんなに権威のある獣医さんでも研究者でも、剖検を含む死因の特定なしに、十分なデータの提供なしに、他の獣医さんのアプローチが妥当だったかどうかの論議は「if」の域を出ないのです。そして多くのペット訴訟のケースでは、十分なデータがそろいにくいと思うのですが? 
十分なデータなしに他の人がした治療の是非を問う事は、日々命という「ナマモノ」と対峙している獣医さん達だからこそ、かかわりたくないと思うのではないでしょうか。
「一つとして同じ命はないのだから、その子の場合はどうだったかは、実際にかかわっていない限り分からない」という事だと思います。
プロキオンさんがおっしゃったように「再現」が効かないのですから、ベテラン獣医さんほど安易に意見は述べられないと思われるでしょう。ましてやこうした掲示板では、情報が片手落ちになりやすいので、死因の特定や治療の妥当性は言えない事も分かります。
それを「かばいあっている」と思われるのは悲しいですが、責任を取れないことを述べる事の方が無責任でしょう。

という事で、第三者機関の設置は望ましい事ですが、それを十分に活用できる素地がないままでは、なかなか難しい事だと思います。少なくとも飼い主が、もっと死因の特定のための検査を進んでするような風潮にならなくては、時間ばかりがかかり、かえって神経をすり減らすばかりになる気もします。裁判は本当に時間も費用も、気力体力ともに必要な事ですからね。
そうした事も考えた上で1件でも2件でも解決できるならば、という事であれば、今回のご提案は価値のあるものだと思います。確かに「さすがにこれは?」と思う事もありますからね。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

サポーター:ホームドクター・専門診療・救急:神奈川最大級のプリモ動物病院グループ様のリンクバナー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。