獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201105-2

Re4:逆性石鹸について教えてください
投稿日 2011年5月1日(日)12時36分 投稿者 プロキオン

>なお、大動物用の麻酔薬を使用する場合、国内の在庫が足りない可能性があるとの
指摘がありますが、大動物用と小動物用の麻酔薬では何が違うのでしょうか?
http://ameblo.jp/matsumoto-sac/entry-10876271700.html


添付URL先の先生が、何か勘違いされているのか、表現が誤解を生んでしまっているのか判断しかねますが。
麻酔薬は麻酔薬で、大動物も小動物も成分に違いはありません。「大動物用の」全身麻酔薬が製造・流通していないというだけのことです。
大動物用の全身麻酔薬がないというのは、どういう事かと言えば、大動物では全身麻酔をかけてはいけないということです。
牛でも馬でも全身麻酔をかけてしまうと、牛であれば第一胃が、馬であれば盲腸が、プロプロトゾアや細菌が植物繊維を分解するとき出すガスの排出を遮断してしまうからです。このため鼓張症や疝痛を発症して、これらの動物はそれこそ悶絶して苦しまなくてはならないからです。
だから、これらの動物では、全身麻酔を用いての手術は実施されません。胃の切開であろうが、腸を弄ろうが、すべて局所麻酔のみで実施しないとなりません。全身麻酔を使えば、それこそ苦しませて死なすだけだからです。
ということになりますから、大動物用の全身麻酔薬は製造しても需要がありません。だから流通もしていません。

流通している全身用麻酔薬で、10キロの犬に1ml摘要するように調整されている製品があるとすれば、これを600キロの牛に摘要するのであれば、60ml必要ということになり、それが800キロの牛であれば、80ml必要ということになりますよね。
これでは、血管内に静脈注射するのが、とても大変です。大動物用に製造されていれば(調整されていれば、)同じ成分であっても10倍の濃度にしてあれば、6mlとか8mlとかの薬用量で済むことになります。
このように高濃度に調整された麻酔薬が流通させておいたとして、では、これを希釈して犬や猫に用いるとしたら、どうでしょうか? まあ、それこそが麻酔事故を誘発する原因になりかねないでしょうね。事故が起きないように、適切な濃度の薬剤が流通することが求められている事なのです。
だから、大動物用の全身麻酔薬は流通していないし、求められてもいないのです。

話しを元に戻しますが、上記の60mlだ、80mlだという薬用量は、所謂一般的な麻酔深度を得るための薬用量ということに相当します。
では、急性薬物中毒による呼吸中枢の麻痺を引き起こすのに必要な薬用量というのは、どのくらい必要なのでしょうか? 5倍なのでしょうか? それとも10倍なのでしょうか? 私は考えたこともありませんし、考えたくもありませんね。

現場で、どのようにして体重を測りますか? まあ、測る事はできないでしょうし、頑張っても推定尺でしょう。600キロの牛に2倍量の120mlを投与、大勢で押さえつけながら頚静脈投与したとして、それで死んでくれなければ、鼓張症でさんざん苦しませて死なせることになってしまいます。
それなら、60mlで麻酔深度に入ったところで、頚静脈を切断して麻酔下での放血殺にした方が牛にとっては親切と言えるでしょう。
「安楽死」というのは、「安楽死」に見えるような演出が必要なのです。それを宮崎であれ、福島であれ、大量処分の現場に求めるのは、酷というものです。

体重も測る必要がない、薬剤も必要でないというのが、と畜場における処置です。この方法であれば、実にスムースに事は運びますが、今回のようなケースであれば、受け入れは難しいのではないでしょうか? 
動物を移動させることが望ましいことではないですし、肉にしても流通に乗せることは憚られるでしょう。何も生み出すことの無い、ただの殺処分であれば、私がと畜場の関係者であっても、首を縦に振ることはできません。

そもそもが、やりたくもない薬殺を業務命令で実施しなくてはならないわけなのですから、関わる者達の安全が優先されなくてはならないし、即効性・確実性を求める事のどこに問題があるのかと思います。使用薬剤に何を用いるかは、それこそが施術者の権利だと思います。これに注文をつけることは、私は僭越であると考えています。
殺される牛や豚にしたところで、短時間でさっさと済ませて貰えた方が、よっぽどましなはずですしね。
薬殺の現場で何を使用するかということで、使用されてきた薬剤があるのであれば、それは現場に立ち会う者達を納得させてきたからということになるのではないでしょうか? それ以外に選択される理由があるのでしょうか?
放れている牛をどうやって捕獲するのか、そして、どのように保定するのか、それらを知らなくてはなりませんし、と畜場も見ておかないとならないでしょう。

それともう一つ、このタイトルというか商品名をもう使わないようにしませんか。製品にも、メーカーにも気の毒ですよ。私のところでは、この消毒薬は使用していませんが、私が使用している消毒薬でも同じことはできるはずですし、また別の製品でも可能なはずです。広く流通しているというだけで、薬殺の代名詞にされてしまうのは、あまりに気の毒です。その気になれば家庭用の中性洗剤を用いても、薬殺できてしまうはずですよ。
この点について、私はもっと配慮があってもよいのではないかと思っています。




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