獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201212-65

Re:「強毒化したパルボウィルス」 について
投稿日 2012年11月11日(日)12時45分 投稿者 プロキオン

すでに一ヶ月前の投稿へのレスとなりますので、投稿者さん御本人の目に届く可能性は低いかと思われますが。
また文章が長くなりますので、私の意見の結論から言えば、新型の強毒株が出現して、子猫もしくは生育期の猫達が死亡したのではなかろうと考えています。
つまり、通常の猫パルボウイルスの感染でも起こり得ることではないかということになります。

まず第一点として、質問する相手を適格に捉えていらっしゃらないように思います。このことが質問投稿に対して、レスがつかなかった理由ではないでしょうか。

ウイルスの新型強毒株の出現ということになると、その前提条件として、問題となるウイルス株の分離とウイルス名の確定、それに毒性試験を欠かすことができません。
このようなことは、街で診察している臨床医にとっては、守備範囲外の仕事であって、確たる根拠があっての事ではないのではないでしょうか?
おそらく、病勢の推移から、そのように説明されただけのことではないかと思うのです。
また、当然ながら、新型強毒株出現について事の真偽を、街の臨床医が判断できることでもありません。
質問先とすれば、ワクチン製造メーカーにおいて、猫パルボウイルスの研究をしている者で、とくにウイルスハンティングに関わっている人間がもっとも情報を持ち合わせているということになるはずです。
これについては、臨床医にしても、ワクチンメーカー個々に直接問い合わせるか、学会報告あるいは、新型ワクチンの製造に関わる情報等で知るしかないように思われます。

2点目として、ウイルスそのものの情報が欠如しているわけですから、主訴となる病状や疫学的な情報が必要なのですが、これらも充分とは言えないようです。こちらからも明確な判断はできないように思われるのです。


>「完全室内飼い」 「ワクチン接種済」 全ての事をクリアした猫達
と記載されていますが、ここに問題があるのではないかと私は想像しています。室内飼育に移行してどのくらいの期間が経過しているのか、それ以前はどのような環境にいたのか、猫達の数や月齢、どのようなワクチンいつ何回接種したかの情報は、かなり重要です。

それは、「元々の先住猫には感染の兆候は一切、ありません。外から来た6ヶ月未満の子猫ばかりが…」との記載があるからです。これは、すなわち既存のワクチンで免疫化された成猫には、感染が成立していないということになると考えられます。感染発病しているのは外来の若い猫達ばかりということですよね。
となりますと、この発病した猫達にワクチン接種してあるのにもかかわらず発病したということになりますので、潜伏期にあった、もしくは、ワクチンブレイクが発生した、あるいは、他の感染症要因の存在とかを考えるのがより一般的な考え方ではないかと思われます。
「外来の若い猫達ばかり」という表現に、投稿者の家に来て、まだ充分な時間が経過していないのではないかと感じます。少なくとも2回の基礎接種が終了してから、免疫量が充分に上昇するだけの時間が経過していたのだろうかと感じているわけです。


そもそも、強毒株・中毒株・弱毒株という毒性の相違も、明確な線引きはありません。
例えば、鶏インフルエンザウイルスを25代継代して鶏卵の胚が5日で死亡していたのが、29代継代で3日で死亡するように毒性が強くなったのであれば、29代継代ウイルスは、25代よりも強毒株であると言えますが、では25代株は弱毒株かと言えば、そうではありません、実際には、どちらも強毒株なのです。
猫パルボウイルスの毒性についても、具体的な線引きについてであれば、私達臨床医には語りようがありません。
が、一般的に理解されている範囲から言えば、弱毒株であれば、猫を発病させてしまうことはないのでないでしょうか?
猫パルボウイルスは野外においては、ひじょうに広範に存在していて、発病させることなく猫から猫へと感染してウイルスの増量と拡散が進行していきます。そして、猫から猫への感染・継代が進んで増殖速度が速くなり、これによって毒性が強化されていくこととなり、猫の発病に至ると考えられています。
すなわち、ワクチンそのものが、猫を発病に至らせる毒力を有しているウイルス株に対応するためのものであるわけです。

ですから、ここで話を戻しますが、先住猫に感染・発病がないところをみますと、やはり従来には存在していなかった強力な毒性をもった新型のウイルス株が出現したとは、考えにくいのです。
野外に存在している普通の強毒株ウイルスにおいても、起こりえることであって、発病した新入りの6ヶ月未満の猫達側に、なんらかの問題があって発病に至った理由が存在していたのではないかと思うのです。

一般的に言って、ネットおける疾病相談となりますと、直接診察することがかなわないわけですから、質問の投稿文中に回答となる事項が記されていなければなりません。
その点が明確となっていれば、こういうことではないでしょうかと述べることもできるのですが、質問内容そのものが、臨床医の仕事の範囲外のことでした。
ここで述べたのは、私の私見なのですが、本当にワクチンの効かない新型株だったのであれば、この一ヶ月の間に、投稿者さんのお住まいの地域において、猫パルボウイルス感染症の流行があって、斃死した猫の数もそれなりにあったのではないかと考えられます。投稿者さんが、知りえる回答としては、それが一番たしかで具体的な回答になるのではないでしょうか。

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