愛護センターの成犬譲渡を仲介したり、自分もセンターからの成犬を複数頭、引き取った経験のある獣医師です。
まずは海さんの犬が留守中に怪我をしたり、破った窓から外に出て迷子にならなくてよかったです。
私は犬を引き取ったら、完全に室内生活に慣れたと判断できるまで、フリーの状態で家を空けないように話しますし、自分もそうしています。成犬の場合、早いコでも、安心してフリーの状態で数時間家を空けられるようになるには、数か月はかかります。
人はそのつもりでも、犬にはここが終の棲家だとはわかりません。特に、愛護センターから来た成犬は、短期間に何度も「飼い主」と「家」が変わっていることが多く、またどこかに連れて行かれるのではないか、好きになった人と別れるのではないかと常にストレスを感じているようにみえます。(その裏返しが誰にでも甘える形で出てくることがあるようにも思います。)愛着と別離の葛藤から、飼い主へのべた甘えや分離不安のような様子を見せることもあります。留守番中の破壊行動など、分離不安様の問題行動には、ご存知のとおり通り叱ることは逆効果です。
犬がここが安心できる自分の家だ、飼い主はいなくなっても必ず帰ってくると信じるられるようになるには、犬によりますが、大体半年はかかるようです。それまでは、家を空けなくてはならない時は、家のためにも、犬の安全のためにもサークルかクレートに入れておくことをお勧めします。クレートトレーニングの利点は、SUMIREさんがお書きになっていらっしゃいます。お仕事などで長時間家を空けなくてはならない場合は、寝床とトイレを別にできるサークルの方がいいかもしれません。ひとりにするときには、時間つぶしのおもちゃ(コングなど)も与えてみてください。
クレートやサークルの中で落ち着いてお留守番ができるようになったら、少しずつ留守の時にもフリーの状態にしてみてください。急がず慌てず、数か月から半年はかかるつもりでゆっくり構えてあげてくださいね。
飼い主を失うというつらい経験をしてきたコが、海さんというステキな飼い主に巡り会えて、本当によかったと思います。成犬と絆を結んでいく過程は、子犬とはまた違い、大人同士の付き合いとでも言いましょうか、お互いの意思を読みあい、歩み寄りあうようなところがあるように感じます。慌てずゆっくりと絆を結んであげてください。