獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-100

Re4:脱水が進むと水が飲めなくなる?
投稿日 2013年9月6日(金)11時24分 投稿者 プロキオン

>>脱水して血液中の老廃物が増加した状態
>イコール、尿毒症の症状という理解でよろしいでしょうか。

これは、一般的な話としてはイコールとは言えません。今回のケースにおいては成立しそうだという限定付きの話です。
尿毒症というのは、腎不全にまつわる症状の一つですから、これを欠いている場合には、「脱水」が「尿毒症」を意味することにはなりません。

猫は本来が砂漠出身の動物であって、水分代謝における独特のものがあって、腎臓にかかる負担が他の動物よりも大きいようです。つまるところ、高齢あるいは老齢の猫においては多少の程度の違いはあっても、「慢性腎不全」の状態にあると考えておいてよいように思います。
日常生活の中において、ゆっくりと少しずつ進行していますので、特段臨床的な症状は確認しにくいのですが、何かあった際には、この事をあらためて認識させられることが多いものです。高齢・老齢猫の治療にあたっては、常にこの点を視野にいれておかないとならないようです。

辞書をひきますと、尿毒症については、次のように記述されています。
「腎機能不全の末期に、尿の生成と排泄の障害により、老廃物が体内に蓄積するために発する症候群である。減尿、無尿、呼吸即速、呼気の尿臭、痴鈍、嗜眠、痙攣、興奮、沈うつ、癲癇様発作などが現れる。(後略)」

ここを読みますと、本当に重篤な尿毒症を表現していますが、そもそも腎不全の入り口では、むしろ尿量の増加と尿比重が軽くなるというようなところから、始まっていると考えられます。これは腎機能の衰えから来ています。それが、さらに進行してから尿量の減少へと繋がります。
したがいまして、私は個人的には、尿量が多いうちは「尿毒症」という扱いはしておらず、腎臓が尿をうまく生成できなくって血液が汚れきて、尿毒症にまつわる徴候が現れてきたものについて、「尿毒症」という扱いをしています。

## この例外としては、雄猫の尿石症における尿閉状態の症例があります。こちらの場合は、尿も生成されていますし、腎不全の有無も関係なく、「尿毒症」としてとりあつかいます。ちょっと古い表現ですと「仮性尿毒症」と呼ばれたりします。これは症状優先の考え方ですね。 ##


>もしそうなら、やはり、脱水→尿毒症→気持ち悪くて飲みたくても飲めない
ということなのですね

今回のお話では、一応このような流れは成立するかと思われますが、では、なぜ「脱水」に至ったのかとなりますと、その前に「気持ちがわるくて水が飲めない」があるからでしょう。水の摂取量が落ちているから脱水になったのだと思います。
では、「水が飲めない」の前の「尿毒症」は、どの時点で成立するかというと、これは分かりません。腎不全がそこそこ前から存在していて、どこかの時点で「水を飲みたいけれども飲むのもしんどい」という点が存在したのでしょう。
一旦、始まってしまえば、これらはループして症状が進行していくことでしょうし、現時点がそのループの中のどこかまでは、わからないのです。

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