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意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-4

Re4:純血種は弱いか
投稿日 2013年7月4日(木)11時44分 投稿者 プロキオン

「雑種強勢」という言葉については、私はあまり信用しておりません。なんとなれば、これは、メンデルの3つの遺伝法則の中における「優勢の法則」を依存しているように考えられるからです。
雑種の1代目においては、優勢な遺伝子が発現するというものですが、発現する優勢な遺伝形質をA、発現しなかった劣勢な遺伝形質をaと表現していますが、生体にとって有利な都合のよい遺伝形質が常にAであるとは限らないからです。

猫においてはマンチカンやスコテッィシュフォールドのような品種では、純血な個体同士だけでの繁殖を繰り返すことが、品種としては致命的な結果をもたらすことが知られています。
このような品種の猫では、近縁な品種の猫との交配を入れることによって、品種が途絶してしまうことを防いでいます。すなわち、AAやaaではなく、Aaにすることによって品種の存続を図っていることになります。
まあ、このように説明すると、それこそが雑種強勢ではないのかという意見が出てきそうですし、一般的にはそのような受け取り方でよろしいのですが、品種そのものを滅亡に導く遺伝子ということになると劣勢遺伝子aというよりも、優勢遺伝子Aが本体と想定する考え方も出てくるわけです。
換言しますと、aaが死に至る遺伝子であるとすれば、品種を作出し固定する過程で排除可能であったのではなかろうかということなのです。AAが問題のあるホモの状態というのであれば、この遺伝子A が染色体のどの位置にあるのかによっては、かなり難しい問題となってしまいます。
上の方で私は、Aaにすることによって品種の存続を図っていると書きましたが、本当のところは単にA やa を分離しているだけのことかもしれません。

いささか話が分かりにくくなってしまいましたので、この部分をまとめます。猫には純血種同士の交配では、途絶えてしまう品種があり、これを防ぐために異なる品種との交配によって品種の存続を図っている例がある。これは一般的に考えられている「雑種強勢」に相当する現象であるが、特定の遺伝子に着目してみると必ずしもそうでないのかもしれない、ということになります。

なぜ、そのような分かりにくいことになるかと言えば、一つにはメンデルの法則から外れた「不完全優勢」というような遺伝が見られたり、巷にいる猫や犬達が、連綿として繋がってきた命であって、初代や二代目・三代目ではないということがあります。
そして、彼ら彼女等の遺伝子地図をまだ読み解けていないことにあります。

そして、マンチカンを例にとりますと、この品種は、1990年代にアメリカで突然変異によって生まれた短足の猫を固定して作出されたまだ若い品種ですが、早い話が、マンチカンではない品種の猫から生まれた猫が始祖となっていて、すでに今現在で、ペルシャ猫やシャム猫等のボディータイプの異なる品種との交配も行われ、これらから生まれた子猫達もマンチカンとして流通しています。
つまり、足が短いというマンチカンの要素を満たしていれば、シャムの子であってもペルシャの子であっても、マンチカンということになるわけです。そういうことになるので、なにをもって純血、なにをもって雑種ということになるのか、雑種強勢の根本が揺らいできてしまうわけなのです。
これは、なにも猫に限った話ではなく、犬においてもある話です。

そして、マンチカンは飼い易い品種の猫かと言えば、私には曹禺した経験がないので他人の意見になってしまいますが。
2人の先生の意見では、どちらの先生も意見が一致していて、「診察しにくい猫」だということでした。



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