獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-96

Re2:歯の治療について(再送)
投稿日 2013年9月5日(木)12時01分 投稿者 プロキオン

あらかじめ断っておきますが、私は歯科は診療項目に入れておりません。

>この場合、5月の時点で内歯瘻の可能性は考えられなかったのでしょうか?

それは診察された先生の経験とその際の患者の状況次第であって、第三者がどうこう判断できるというものではないと思います。

>カットした牙のうち2本が歯髄が露出して炎症を起こしていると言われました。
手術前にその牙の処置もしてくれるものだと思い、確認したところ「今は必要ない」と言われました。

まあ、ここなのですよ。とりあえず抗生物質で炎症を抑制できれば、その後の状況で考えようという判断なのか、それとも支障となるような問題はおきないと考えていたのかは、当事者でないと分かりようが有りませんし、歯髄の炎症というのも程度そのものが把握できませんので。
「もし、あの時…」「あの時、こうしていたら」「…れば」は、事後だからこそ言えることであって、肝心のその時に、どのような考えていたかは、なかなか難しいことですね。

通常、人間の歯科医では、虫歯の際には歯を削って、歯髄を殺して抜去してから充填して塞ぐという手順をとります。そして、この手順をとるために何日もかけて、少しずつ進めていきます。
けれども、動物が相手ですと、麻酔をかけないとこの作業ができませんし、何日もという日数をかけることができません。そのために、歯髄が露出するほど歯冠をカットしたとしても、人間のような歯髄処置がかないませんので、いきおい、歯科用セメントやレジンで歯髄腔を塞いでという処置をとらざるを得ません。
では、この歯科用セメントやレジンが、ずっとこのまま充填してくれているのか、それともどのくらいで、取れてしまうのかとなると、それはなかなかに予測の付かないことであって、処置した者であれば、きっと「ずっと取れないでいてくれ」と考えているとおもいます。


>6月か7月か、口の中を見たところ、牙のうちの1本の付け根に虫歯のような穴が出来ているのを発見しました。

おそらく、このときにはすでに「歯髄炎」を通り越して、「瘻管・瘻孔」が形成されてしまっていたように思われます。漏出物をいうのは、犬本人が舐めて呑み込んでしまっているでしょうから、見た目以外に歯肉の炎症や化膿臭や口臭をチェックすると良いと思います。
と言いますのは、すでに歯髄が壊死してしまって黒く変色しているのにもかかわらず、他に何らの異常も伴っていないという現象自体が、しばしばあるからです。これは犬歯を破損した個体というのに遭遇する機会があるから言えるのですが。

>いつも診てくれている先生ではなかったのですが、「これは放っておいても大丈夫、犬は虫歯になりにくいから」と言われました。

犬が虫歯になりにくいというのは、その通りだと思います。一般的には歯周病の方が起こりやすいので。

>でも、穴が出来ているし、心配だったので念押しにもう一回聞いたところ「絶対じゃないけれど、悪くなったらここでは抜くしかない」と言われました。

これも、正直な話だと思います。普通であれば、歯髄炎となっていたのであれば、歯根部の炎症や歯槽骨の炎症や融解の方を心配しなくてはならないのですが、「大丈夫」と言ったのは、おそらく、その徴候は見られないという意味ではないかと思います。
仮にそちらの徴候があれば、それこそ、そちらの病院では抜歯という処置しか選択しようがないということなのでしょう。
歯科を標榜することができるくらいの病院であれば、歯髄を殺して除去するという処置も、歯髄腔の清掃や充填処置も手数や日数をかけることも、専門処置ということで範疇に入るでしょうし、また、飼い主さんもそれを望んで来院されることと考えられます。

迷い犬の犬歯4本が、それこそ平らにカットされていたということがありましたが、犬本人は決して攻撃的な犬という事ではなく、当時は、どこの誰がこんなことをしたのだろうと考えたことがありましたが、その犬の歯髄も黒くなっていましたが、それだけでした。
また、エキゾチックペットの方では、サルやアライグマが攻撃的ということで犬歯をカットすることがしばしば求められるようですが、そちらでも歯髄を抜くというのではなく、カットした歯冠部に蓋をするという処置までが一般的なようです。
ただし、こちらの場合では、動物自体が大人しくしてくれているわけではないので、その後の充填物をとられてしまったり、歯髄炎というのはあるようで、目の直前の皮膚に歯根膿瘍が原因で穴が開いてしまうということはあるそうです。

歯冠をそこそこの位置までカットするなら、歯髄も傷むわけであって、歯髄炎や壊死は起こり得ることと言えますし、そういう点は当然考えておかなくてはならないのですが、街の普通の動物病院のレベルであれば、カットして蓋をしてまでではないかと思いますし、歯の根元に穴があくというのは、私であれば予想しえないことと言えます。

歯髄腔の内容と言えば歯髄ですから、その程度の蛋白質量だけで歯に穴を開けるほどの炎症が起きるものなのかと言うのが正直な感想です。
歯髄炎が起きても、歯根からの血管が閉じてしまえば、そのまま黒く壊死してしまうだけですし、歯根を介して骨にまで達したとしても歯周病や歯槽膿漏・歯根膿瘍になるわけであって、この件がなんども繰り返しになって恐縮ですが、やはりこちらの方を予想・予測される先生の方がが多いのではないかと想像します。




◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

サポーター:「ペット用品販売」「犬の快癒整体」OrangeCafe様のリンクバナー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。