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Re3:猫のパルボについて
投稿日 2014年9月13日(土)12時24分 投稿者 プロキオン

少し違う方向からの意見ですが。 ( 後半は、関連の小耳ネタです。 )

猫のパルボウイルスというのは、屋外においては広く蔓延しており、外を自由気ままに歩き回っている猫においてはいつどこでどう感染していても不思議ではない環境にあると思います。そのような意味合いからは、特定の場所を洗浄消毒したからと言って地域的な感染率が大きく低下するということはないということがあるのかもしれませんね。

では、感染した猫の飼育者がそれをそのまま放置していて良いかとなると、マナーの点からだけでも良い事とは言えないように考えます。
そして、通常の病原体は同じ動物の間で感染を繰り返していく都度、その毒力が強くなっていきます。(風邪の流行期に最後に罹患した人ほど重くなるという現象です)
屋外に存在しているパルボウイルスが、当初は猫に感染しても発病するまでに至らなくて猫の間で感染を繰り返すうちに発病に至る猫が出現し、その猫から感染した次の猫はさらに重症化するということになります。ということになりますと、発病した猫がいる家庭では、その毒性の強くなってしまったウイルスが存在してしまっているわけですから、そのまま放置しておくということは、あまり勧められることではないと思います。
例え、猫達が家の中から外に出ないとしても、人間の衣服や靴を介してウイルスは別の場所へと運ばれていくことになりますから、やはりできる範囲での消毒は実施された方が良いように考えます。

毒性の強さということで狂犬病ウイルスを例に上げますと、屋外で犬が感染するウイルスを街上毒、ワクチンに使用されるウイルスを固定毒と呼んでいます。
私達は、ワクチンに使用する元株ですから固定毒の方が毒性が弱いように考えてしまいがちになりますが、実際には固定毒の方が毒性が強いのです。

街上毒による感染では、およそ1ヶ月前後で犬は発病に至るようです。ワクチン開発者であるパスツールは、当時、狂犬病ウイルスの正体がよくわかっておらずウサギの脳に発病した犬の脳乳剤を接種することで狂犬病を発病させることができることから、これを繰り返すことによって病原体を継代しワクチン開発の道筋を研究していました。
ウサギの脳への継代を100回ほどくりかえしたところ、それまでの少しづつ短くなってきた発病までの期間が6日くらいとなり、それ以上はいくら繰り返しても発病までの期間は短縮されなくなりました。
これをもってパスツールは、病毒が固定されたと考えるにいたり、この固定毒を利用してワクチン開発の可能性を見出したわけです。
実際には、この固定毒を苛性カリに反応させ弱毒化を順次進めていき、2週間後の乳剤において毒力が失われ、この毒力が失われた乳剤を犬に接種し、逐次、毒力の弱いものから強いものを接種していくことによって、犬に狂犬病に対する免疫をあたえることができるのではないかと考えたわけです。

こうしてワクチン製造の方向性は見えてきたのですが、国に申請したはしたものの、興味をもたれることなくなかなか進まなかったようです。
事態が動いたのは、9歳の少年が狂犬病の犬に噛まれ、ワクチン開発中のパスツールに助けを求めてきたことからです。この少年の命をパスツールのワクチンが救ったことから、狂犬病ワクチンが世に出ることとなりました。
現在のワクチンは製造法も違ってきておりますし、弱毒生ワクチンを利用している国もありますし、脳乳剤を原料とすることもありません。

今回のお話の中でのポイントとしては、同じ動物(同じ種類の細胞)の間でウイルスが受け継がれていくと、毒性が強くなる傾向があるというところです。これは鳥インフルエンザウイルスにおいても同じ事が確認されています。
逆に、異種の動物を通過させるという形でウイルスの毒性を弱めるという弱毒化の方法もあります。

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