獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201501-193

Re2:文鳥の発情期は夏、と医師に言われます
投稿日 2015年7月17日(金)11時59分 投稿者 プロキオン

>こもだるさん

鳥の繁殖期は夏か冬かと言う二者択一の問いであれば、至極簡単なことであって答えは「夏」に決まっています。
渡り鳥を思い浮かべて欲しいのですが、彼ら彼女らは白鳥やマナヅル・ナベヅル等であれば、冬に日本に渡ってくるのは冬越しが目的であって繁殖ではありません。反対にツバメやハチクマ、仏法僧のような夏に渡ってくる鳥達は、日本において繁殖します。つまり、夏鳥にとっては日本が本来の生息地であって、ここで繁殖して冬越しのために南に渡っていくということになります。
白鳥はシベリアで夏に繁殖し、渡りをするツル達は夏にロシアや中国の一部で繁殖します。
これは気温や餌の豊富さに由来しているものであって、「繁殖期が夏か冬か」という命題で考えれば、これはもう「夏」ということになっているわけです。
と言いますか、繁殖している所が本来の生息地であって、繁殖期である「夏」を主体に考えられているということになります。

では、実際に日本の野鳥における繁殖期はという話しになりますと、これは普通「春」と「秋」ということになります。むろん、夏に繁殖しているものも存在しています。
私が小学生の頃に愛読していた宇田川竜男先生の飼育書には、文鳥の繁殖期は「春と秋」とありましたが、これは「秋と春」であっても良いわけです。
野鳥は秋に発情や巣引きがあっても、冬にむかって気温の低下・日照時間の短縮・餌の減少等々があって、発情が抑制休止に至り、春になって再開されます。当然餌の量も春から夏にかけての方が育雛にも都合がよいからです。
私が子供の頃に飼育していた文鳥達は、家の軒下で飼育していましたので気温や日照では抑制がかかっていたはずでしたが、それでも餌が不足するということはないのですから、冬でも巣引きしようとするものもおりました。
それは何故と言えば、文鳥の原産国は東南アジアであって、ジャワスパロウと呼ばれていた鳥だからです。本来の生息地である原産国では一年を通して夏と呼べる気候であって、暦の上における冬であっても「夏」なのです。
むしろ、東南アジアにおける暦の上での夏の方が暑さが厳しく、産卵するにはそれなりに消耗が激しいとも言えます。

文鳥の輸入はたしか江戸時代に遡ると思いましたが、近年にいたるまでは、日本の気候にあわせた繁殖が行われ、繁殖者も換羽の時期もあって夏の産み疲れや冬の卵詰りを防ぐように人間の手によってコントロールされて守られてきました。
ですから、宇田川先生の本でも春と秋と記載されていましたし、春子(はるご)の繁殖は秋から、秋子の繁殖は初夏というようになっていました。私もそのような考えてきましたし、盛夏や冬の繁殖は避けるようにしていました。


>産卵や発情のトラブルは自分の飼鳥含め、皆さん冬に多いと思っております。ですが、かかりつけの獣医さんには毎回「文鳥は夏が繁殖期」と説明を受けます。飼育書を見る限り、秋〜春と明記されています。
  ここは、考え方や視点の相違ではないでしょうか。私の経験からは日本の冬が繁殖に適した季節とは言い難いように感じますし、「飼育書の秋〜春」も春生まれの春子(はるご)にとっての話しであって、秋子では違うと思います。
獣医師の先生も忙しいのかもしれませんが、繁殖期は夏と言うのであれば、その理由も説明していただきたいですよね。
また、飼育書の執筆者の方にしても執筆活動であれば、猶のこと時間をかけて丁寧な記述が必要なように思われます。冬にも繁殖を勧めているのか、単に暦の季節と気候のズレを無視しているのか? そこは大事な箇所ですから、キチンと説明して欲しいですね。

>文鳥は野生環境下において夏、繁殖するという事なのでしょうか。
  現在の東南アジアにおいては、野生の文鳥というのもなかなか見る機会はないと考えられますが、上記のように「暦上の冬に夏の気候下で」繁殖していることになるはずです。
日本において篭脱けした文鳥であれば、一般的は繁殖していないと考えられますが、条件の整ったところで暮らしていれば、繁殖はできると思います。

>冬が繁殖期でないとするなら冬に発情する飼育環境に問題があるという事なのでしょうか。
  すでにこもだるさん御自身がお書きになられているように日本の冬における繁殖には問題がつきまといます。繁殖を望むしても敢えて冬に巣引きをさせなくてもよいように思いますし、その方が文鳥自身も体が楽なのではないかと思いますし、落鳥させる危険もないのではないでしょうか。
環境にも問題があるかもしれませんが、「繁殖期の体内時計」は条件があえば産卵しなさいと指示をだすのでしょうね。
江戸時代から昭和初期までであれば、この「繁殖期の体内時計」のズレは環境条件によって抑えられていたのでしょうが、人間が一年を通して暮らしやすい環境を追い求めたために、抑制条件が失われつつあって、少しずつ顕在化してきたのではないでしょうか。


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