獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201701-10

Re3:犬 リンパ腫?
投稿日 2017年1月20日(金)12時07分 投稿者 プロキオン

sumireさん、フォローありがとうございました。昨日の私のレスでは言葉足らずでしたし、ちょっと意味が通じかねる箇所もあったかと思います。
自分で読み返してみても、これでこちらの言いたいことが伝わるのかなと感じたのですが、どうもうまく言葉おきかえることができませんでした。

当初の時点で投稿者さんに私が感じた2点、すなわち、「免疫療法」をどのようなものと捉えているのだろうか? と実際に診療されている先生方とすでに気持ちがすれ違ってしまっている、という事に関しては、けりーずはうす先生が述べられていました。
同じレスを重ねられても、あまり良い印象は持たれないでしょうし、免疫療法の捉え方について質問するにしても、おそらく診療されている先生方と同じやりとりを繰り返すことになるのかもしれない、それでは逆効果にしかならないと感じておりました。

免疫療法は簡単に言うと、患者自身免疫担当細胞を活性化あるいは腫瘍を攻撃させやすくするための物質を付加して、患者自身の力で腫瘍細胞を排除させようと意図するものの総称ということになります。
一般的にはリンパ球が腫瘍細胞を攻撃排除することになりますが、今回のケースでは腫瘍細胞がリンパ球ということになりますから、腫瘍細胞で腫瘍細胞を排除するというパラドックスに陥るわけでして、はたして適応と言えるのかという疑問です。
むろん、腫瘍細胞を排除するのはリンパ球の中の特定の種類となりますので、すべてのリンパ球が腫瘍細胞と化しているわけではありません。けれども、その選別とどのようにしてリンパ球に腫瘍化している自分の仲間であるリンパ球を見分けさせて攻撃させるのかという手法になると、これは専門家であっても容易なことではないと思うのです。
マーカーの役割をする物質はあるのか、または、マクロファージや他の白血球を増員させるのか、そもそも、本当にリンパ腫と確定診断されているのか等々考えれば、これはレスするのに躊躇うものがあります。
まして、すでに診察・治療されている先生方とすれ違いが生じているわけですから、余計に混乱を広げるべきではないと考えます。

# 免疫療法で分かりやすい例といえば、「丸山ワクチン」がありますが、実際にこの薬剤を使用している先生が同じ県内におられます。使いやすい薬剤ですが、今もって抗癌剤としての認可は無く、放射線療法における白血球減少症への治験薬という扱いです。
むろん、白血球を増加させるということですから、リンパ腫に適応してよいのかとなります。

私達、街医者の守備範囲からいけば、リンパ腫であれば化学療法剤の適応としたいところですが、そちらの方が実効性が期待できるからです。
ただ、昨今の化学療法剤も効果や副作用の軽減から複数の化学療法剤のカクテルとなりますから、その摘要やプロトコルは、化学療法剤の専門家にお願いしたいところです。
そして、繰り返しになりますが、リンパ腫の診断で間違いがないという確定も欲しいわけです。

投稿主さんの続報を拝見すると、実際に受けている治療と希望が異なる、さらに、「食べてくれない」というのがあります。
これは食欲が落ちていくというのは、自然な流れであって、「食べる事が負担なステージ」に入っていると考えるべきでもあり、実施している治療との兼ね合いもあります。ですから、そこは当然治療している獣医師がしかるべき説明を実施しなくてはなりませんが、そういう会話にいたる点をすれ違ってしまっていたのではないかと推測しています。

昨日の私のレスで、飼い主が決めなくてはというところで、誤解があるといけないのですが、安楽死を勧めているわけではありません。
免疫療法が希望であるのなら、実施してくれる病院を探し求めていく、化学療法剤なら化学療法剤を信じる、「死」が避けられないのならターミナルケアーに重点を置くという決断です。患者の残りの人生をどう過ごさせるのかと言う決断のことです。
1分1秒でも長くというのであれば、病院に入院しての4ヶ月。常に傍に居て撫ぜてあげたいという自宅での2ヶ月とでも言えばよいのでしょうか?

義母も胃癌で開腹しても手遅れだったので、化学療法剤のお世話になりましたが、その副作用の発現に対しては、私ども夫婦で主治医の先生と話しをしました。いきなり服用中止なら、「もう駄目なのか」と思われてもいけないから減量ということでしたが、そんな気遣いも余計だったようで、知っていて何も言わなかったみたいでした。

街医者なんだから、ターミナルケアーを持ち出してと受け取られる方もいるかもしれませんが、これはこれで結構しんどいものがあります。
薬剤に反応してくれるうちは良いのですが、反応できなくなる段階へ入ってしまうと、それこそ飼い主さんの気持ちになんら応えることができません。寄り添えば寄り添う程に、事後の精神的な落ち込みがひどくなります。
待っている患者は一人だけではないのですから、やはり心の距離は必要だと考えています。
助けようの無い患者に関わって、病院を閉じた先生が身近にいますので。

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