獣医師広報板ニュース

災害と動物掲示板過去発言No.0700-201104-83

Re:原発付近のペットの保護について・・・
投稿日 2011年4月9日(土)12時52分 投稿者 プロキオン

>個人であり団体であっても近隣の獣医師の元「線量計によるチェック」を必ず行い、その結果を踏まえ安全確認されたペットから現地で必要手続を済ませた後に、預かっていただける方や保護施設など県外移送が初めて可能になると考えてよろしいでしょうか?


「近隣の獣医師」という点にちょっと注意が必要です。

「犬への放射線スクリーニング検査の有効性」「獣医師は放射線を取り扱うことができるか」「ホットアトムとコールドアトム」などで述べましたように、一般の獣医師は放射線に縁がありませんから、スクリーニング用の放射線測定器は所持しておりません。せいぜいが個人被ばく線量計くらいでしょう。これでは、放射能(放射性同位元素)の有無は調べる事はできません、用途がもともと違っていますので。
また、GM式の放射線測定器もすでになんども繰り返し述べていますが、体内被ばくはわかりません。獣医師は、放射線と放射能については素人であって、法律的にも実務的にもこれらに対応するのは、難があります。
既出の意見ですが、放射線取り扱いの資格を有した獣医師やその道の専門家である有資格者に出向していただかないとならないと思います。そのようにして基幹対応病院・基幹センターとして安全性をチェックした後に近隣の動物病院や愛護センター等に引き継ぐという流れが望ましいと考えます。

>そうすることによって、保護届を出すことで飼い主様の元に返せる確率が高くなり、二次被爆や風評被害も回避できるということでよろしいですか?

はい、私はそのように考えています。放射線障害防止法という法律がありますから、そちらとの整合性を図った上での救護を提唱するのでないとならないと思います。法律を無視した提言は、批判されるだけでなく、信用を失うだけにしかなりません。
アウトローな意見が跋扈するようになってしまうと、今、黙認されていることすら規制を受けるようになるかもしれません。そのようなかえってマイナスとならないようにという目的での声をあげるという必要もあるのです。獣医師は一般的に放射能や放射線については、素人です。でも、その獣医師からも放射能を考慮にいれた意見が出ていることを残しておく事が大切なのだと思います。
ただ、これは福島の原発周辺においての話です。被災地は福島よりも広いわけですから、他の被災地では放射線や放射能の心配はしなくてもよいことになります。
でも、飼い主のもとへ返すことが前提の救護ですから、被災動物を拡散させずに飼い主さんの目が届くところが望ましいというのは、共通すると思います。


あと、二次被ばくについては、飼い主さんと避難所にいる動物では、まず心配される必要はないと個人的には考えています。屋外にいるわけでもありませんし、食べ物の汚染の可能性もほとんどないはずですから。
屋外にいる動物には、分かりかねます。これも既出ですが、体表に付着するであろう放射能(放射性同位元素)を動物は、自ら舐めとってしまう可能性もありますし、飲食も屋外ですから、体内被ばくが起きる可能性は人間よりも高いと考えざるをえません。細胞の感受性ということは次元の違う問題です。
放射能(放射性同位元素)が体内に入った場合の取り扱いというのも、「PET」に関わる記述の際にこれも既出ですので、再掲は省略します。
今回の震災における放射線については、高度医療センターのN先生の発言がよく引用されるのですが、放射線についての見解にとどまっているように感じます。N先生は、獣医師広報板ではおなじみの先生であって、東海村の臨界事故のときにも、私の知りえない情報を教えて頂いた事があります。高度医療センターには、PETが設置されていますから、F18における体内被ばく動物の取り扱いは、充分に承知されていますし(むしろ教える側の立場でしょう。)、放射線と放射能(放射性同位元素)の差異も、取り扱いの違いも、知らないという事は考えられないことです。
不安を抑制する意図での時系列にそった発言であって、私の発言もそれに矛盾していません。

放射線と放射能(放射性同位元素)は、同一に考えることはできないのは基本的なことなのですが、頭の中で考えるとちょっとピンと来ないのかもしれません。
実習や実務になると、混同していると被ばくしてしまいますから、それこそ初歩の段階で教え込まれます。
放射能汚染は防ぐことはできても、放射線被ばくは防ぎ得ないというのケースもあれば、検出できない微量の放射能汚染を受けてしまっているケースも出てくる事もありえます。
このあたりの事項となると、いきなり理解してくれと言っても難しいことだという事は私にも理解できているのですが、他の人と、話がすれ違う場面が出てくるのは、本当はこのようなところからなのだと思います。

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