獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200612-25

re: 人工授精について
投稿日 2006年11月15日(水)12時02分 投稿者 プロキオン

その後、書き込みがないようですので。

人工授精の失敗というのは、大抵の場合が「人工授精」に該当しない手法で終わっている
からではないでしょうか?
本来の人工授精であれば、精液の採取の時点から、精子の「運動性」「生存率」「奇形率
」等を検査して不適なものが使用されるということはありません。
また、採取して精液も栄養供給や保存を考慮した液体中に保存されています。
受精される雌側でも、子宮頚管拡張器や頚管保持器具さらに注入器を使用して、確実に子
宮内へ注入されます。
これが、犬の場合となると、大抵の場合が注射シリンジを使って、そのまま膣内へ入れて
いるだけですよね。膣内は外界と連絡している場所ですから、生物学的には汚染地帯と考
えられます。そこへそのまま入れるのであれば、雄犬の自然交配にまかせたのとなんら変
わりません。
変わらないというよりも、受精適期をむしろ外してしまっている可能性の方が高くはない
でしょうか? 成功率が低いというのも不思議でもなんでもありません。

で、「器具の消毒」ですが、これは本来的には消毒ではなく、「乾熱滅菌」や「湿熱加圧
滅菌」が適当といえます。消毒薬を用いるということになると、その成分が残留している
と精子に影響を与えてしまいます。消毒薬を用いたのであれば、滅菌精製水でよく洗浄し
ておく必要があります。
ガス滅菌は手軽でよいのですが、この場合もガスが影響しますので、使用前にガスをとば
しておくことが肝心です。

人工授精がうまくいかない場合に考えられることは、
1、雄の精子に問題がある
2、雌の卵子、卵管、子宮状態に問題がある
3、受精手技に問題ある
4、受精適期が外れている
という4つの観点があると考えられます。

雄は元気で精液も採取できていると場合でも、精子そのものも問題以外に、精液に含ま
れる精子保護のための油脂成分や白血球等が希釈されていることも、まま、あります。
一番大きいのは受精のタイミングではないでしょうか? 受胎率が高く腕の良いと評判
の人工授精師さんの場合では、それこそ3〜4時間おきに直腸検査で卵巣における卵胞
の大きさや排卵時期をチェックしているそうですよ。そこまでやらなくても受胎はする
のでしょうが、人工授精を職業としており、その受胎率が看板となる世界ですので、手
間暇はおしまないということなのでしょう。

そういう人工授精師さんでもなかなか種が止まらないという雌牛は、卵管の通風試験と
か子宮内洗浄が必要な場合となります。

犬の場合は、精液のすり替えがないように自然交配が原則となっていますから、人工授
精が牛の場合のように発達していませんし、犬用の器具も製造されておりません。
人工授精とは言っても、牛や豚と同じくらいの受胎率は期待してはならないように思い
ます。




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