獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200407-11

持続感染
投稿日 2004年6月6日(日)12時12分 投稿者 プロキオン

>もーたさん


>この猫がかかっている獣医さんでは
 >猫カリシウイルス感染症は、慢性のキャリア状態になってしまう病気で
 >持続的に口腔咽頭からウィルスを排出する
 と説明を受けたようです。

野良猫なんかが餌場に集まったりしているような所では、猫から猫へ
常時ウイルスが感先しており、集団として、いつまでも感染が続くこと
は、普通の事と言えます。
また、個体においても栄養状態や免疫状態によって、完全にウイルスを
体外へ駆逐することができずに、ウイルスと免疫とが共存する状態とい
うのも起こり得ます。
特に副鼻腔等では、ウイルスも細菌も定着しやすく、長期間に亘って、
これらの病原体の排泄をすることになりがちです。

咽喉頭の場合は、病原体の侵入の第一関門でもありますので、ここでは
リンパ組織が頑張ってくれているはずですので、ここでのウイルスの増
殖や定着はあまり心配なさらなくてもよろしいでしょう。
ただ、それでも咳やくしゃみの際には、鼻汁や唾液とともに病原体を含
んだ飛沫は拡散してしまうと思います。
この状態というのは、確かに「慢性化」した状態でもありますが、それ
はすなわち感染が持続しており、治癒していないということになります。

もーたさんの最初の書き込みでは、治癒後に再感染するか否かという質
問として受け取りましたが、治癒していなかったということになるので
しょうか?
( 子猫の頃の感染で、治癒して免疫が成立して、すでにかなりの時間
  が経過していると受け取りましたが。 )
治癒していなかったのであれば、これはウイルスの排泄が考えられます
ので、キャリアーとしての注意は必要になります。
また、治癒していた場合も、昨日のレスのように再度の感染は起こり得
ます。とくにウイルス株がかなり異なる株であれば、なおのことです。

野良猫ではなく、家猫なのですが、複数飼育されているということであ
れば、すでに他の猫もウイルスには接触しているはずです。
端的に言ってしまえば、一番弱い猫に発病して現れたということになる
のではないでしょうか?
弱毒株でも猫の体を継代されていくうちに、増殖スピードが増して、短
時間で増えるようになる現象です。人間の風邪でも家族の中で一番最後
に罹患する者が一番重いというあれです。

集団としての持続感染か、あるいは個体の中での持続感染かの問題はあ
りますが、いずれにせよ、複数飼育であれば、全頭ウイルスの暴露にさ
らされていることになります。
そのことを念頭においた治療が必要になると考えます。

また、とくに特定の集団の中でのことに限定しなくても、屋外に1歩出
れば、このウイルスはどこにでも存在します。たぶん、猫が存在する限
り、このウイルスもまた存在しつづけるのです。

前回の罹患から、時間が経過していないのであれば、治癒しておらずに
感染が持続していたということになるのでしょうし、すでにそれなりの
日時が経過しており、その間に病的な所見が認められなかったという場
合でも、再感染があったとしても話としては不思議ではないと考えます。

どちらの場合にせよ、個体が得る事ができる免疫に100%の完全さは
ありません。

#ヘルペスウイルスにおいては、猫の体内の免疫抗体が上昇してくると
 ウイルスは神経節の中へ逃げ込み、ここにそれこそ何年もの間潜んで
 居ます。
 抗体価が下降してきて、再びウイルスが活動できる環境が整うと、再
 度血液中に出現して、症状の再現を行います。
 抗体が上昇すれば、また、同じように神経節へ逃げ込みます。このく
 り返しなので、子猫の頃に罹った鼻気管炎でも、後々、再発病すると
 いう現象が見られます。
 これも持続感染の1つの形態です。

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