獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200410-51

Re:獣医はビジネス?
投稿日 2004年10月13日(水)12時39分 投稿者 プロキオン

獣医業は、ビジネスか否かという問題であるのなら、何も他人に聞くまで
もなくビジネスです。職業として、「獣医師」という職種がある以上は、
その為した仕事に対して対価が生じるのは当たり前のことといえます。

ぐうさんがここに書き込まれたのは、「自分は猫を助けようとして良い事
をしようとしたのに、何故自分がお金を請求されなくてはならないのか」
という疑問なのでしょう。
良いことをしてお金を請求されるのは不条理では無いかという疑問なんだ
と思います。でも、それは本当に不条理なことなのでしょうか?


獣医師というのは、税務署の分類でいけば、美容師さんや理容師さんと同
じ位置にあって、技術を売るサービス業に該当しています。「医療技術」
を扱っていても医師のような税制上の優遇はありません。すなわち、公益
性を認めてもいないし、求めてもいないのです。

分かりやすく申しますと、公園にホームレスの者がいたとして、その姿を
見兼ねた人間が、理髪店へ連れて行って、「かわいそうだから、シャンプ
ーして散髪してやってくれ」とその店の主人に言えば、店の方では連れて
きた方が料金は支払ってくれるものと受け取ります。これは、世間的に考
えて常識と受けとってよいと考えられます。
要は何故、動物病院に限っては、そのように考えて貰えないのかなのでは
ないでしょうか?

街にある多くの動物病院は、入院で預けられたまま引き取りに来ない猫や
玄関先に捨てて行かれた動物等でほとほと処遇に窮しています。そのよう
な経験をしたことのない病院は、まずないのではないかと考えられるくら
い当たり前のようにあることなのです。
知り合いや患者さん達に頭を下げて、引き取りをお願いし、ワクチン接種
しますからとか、避妊手術しますからとか言って、本来代価を得るはずの
行為を無償で実施したりして、それらの動物の引き取り手を捜すことにな
ります。
獣医師なのだから、当然のことと考えないでください。獣医師にも生活が
ありますし、家族も養わなくてはなりません。病院に必要な医薬品や器材
というのも考えているのよりもずっと高価なのです。
そういう必要なものを揃えるためのお金が、捨て猫のために削られていく
わけです。
動物が好きなんだから当たり前じゃん、とか、動物をネタに食っているん
だからたまにはタダ働きくらいしないと罰があたるという発言も実際に耳
にしたことがあります。
でも、みながみな、このような考えで動物をもちこめば、病院が立ち行か
なくなるのも時間の問題です。
動物病院には、人間の病院とは異なって、踏み倒し料金の補填制度はない
のです。また、道路上に放置された飼い主不明の犬猫の救護と診療につい
ては、法律で行政と定められています。具体的には、県の愛護センターが
指定されているはずです。
ですから、受け皿も、理屈も違うところへ話を持ち込んでしまっているの
ですよ。
 # 法律がキチンと機能しているか否かは別問題として…。

猫なんてね、3軒先へ行けば、もう野良猫と区別がつきません。「この子
は、私の猫でありません。餌だけ食べに来る猫なので、安くして下さい」
という注文のなんと多い事か!!
携帯電話の番号だけで、住所が偽りの診療申込書もいっぱいですよね。今
手持ちのお金がないと言いながら、いっこうに支払いがないので確かめた
ら最初から支払う意志がなかったという意図的なケースです。
ですから、動物病院も連絡先が固定電話ではなく、携帯の番号しか書かな
い飼い主というのは、一応、疑ってかかる必要があるのですよ!

「動物が好きなら、飯のネタなら、たまにはタダ働きしろ」という理屈が
まかり通るものなら、街のラーメン店やファミレスで、「料理が好きなら
、それで飯くっているなら、」と無銭飲食しても警察ザタになることもな
いはずですよね。

ですから、「自分が料金を支払わなくてはならないこと」をぐうさんが不
条理と考えてしまうことに合理性が欠けています。世の中の仕組みからい
けば、その考えてしまうことの方が不自然なのです。
私は、街の病院で捨て猫で窮していない病院はないのではないかと言いま
した。そうなんです、どの病院も困ってあれこれ悩んでいるのです。その
姿が目の一端に映っていたからこそ、動物病院へとなってしまうのです。
でも、ただ、単に病院へ持ち込むだけなら、病院の負担を増やしているだ
けであって、病院にとっては、むしろ迷惑なのです。

「動物愛護」を盾にとって病院を攻める(責める)のなら、逆に自分もそ
れらの活動の一端を担うべきなのです。
無償を求めるのであれば、自分も違う形で協力できる代価を考えなくては
ならないのです。ボランティアは、他人に強制すべきものではありません
し、自発的かつ自分にできることの範囲で実施されるかと考えます。

ぐうさんのケースですと、自分は猫を助けようとして良いことをしようと
したのに、それに応じてくれなかった動物病院を不誠実と感じられたとい
うことにつきるように思います。
「愛護と言う名のボランティア」を期待する考えと、「ボランティアばか
りではやっていけない」台所事情のすれ違いなのです。


藤さんのケースですと、これは医療内容にひっかかりますね。
療法食は、医薬品に準じるものとして動物病院限定販売がメーカーの考え
です。そして、価格も統一してきます。
が、しかし、ペットショップでは若い獣医師を雇用して、「療法食がとり
あつかえる」「病院よりも安価である」をセールスポイントにしたいわけ
です。病院が価格を下げれば、また下げるということなのでしょう。
おそらく、藤さんに対して怒ったというよりは、そのペットショップに対
してということなのだと思います。動物病院は「薬屋」ではありませんか
ら、薬品や療法食の販売だけではないはずなのです。獣医療行為というも
のが飼い主に伝わっていなかった、理解して貰えていなかったという無念
さだったのではないかと考えます。

そして、これはもう何回も言ってきていますが、猫のワクチンは感染を防
ぐタイプのワクチンではありません。病気を軽くするためのワクチンです。
したがって、接種してあれば、3年も5年も大丈夫ということはありませ
ん。1年もたたずに再感染することも当然あります。
アメリカでワクチン誘発性の繊維肉腫問題で他のメーカーから抜け駆けを
はかったメーカーがあって、いろんな組織や団体同士の駆け引きの結果と
して、そのような指針を作成した団体もあるということです。

実際問題としては、現行のワクチンであれば、どこのメーカーであろうと
感染を完全に阻止できるレベルのワクチンは存在していません。
ワクチンによる免疫の成立過程を変えてしまう必要があり、そのための新
種のワクチンはまだ研究開発段階です。
現行のワクチンで3〜5年有効にしようとすれば、ワクチンではなく、猫
の飼育環境から、相当に良好な状態に保つ必要があります。周囲に野良猫
や外猫が徘徊しているような情況であれば、その効果は期待しない方がよ
ろしいでしょう。
この問題については、1年1回を勧められたからと言って、ビジネスとい
うことにはならないでしょう。メーカーの使用説明書も国の適用認可も、
そのようになっていますし、実際に感染してしまう猫はいっぱい見ていま
す。ビジネスではなく、猫の健康を守るために、この疾病を防遏するため
に、年1回の接種が望ましいと思います。

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