獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200711-20

Re:一週間だけの家族
投稿日 2007年11月6日(火)15時36分 投稿者 プロキオン

>なかぽんさん

「治療が正しかったのか」というような内容となりますと、獣医師からのレスは付かないのが普通です。
大学では、ほとんどの場合で治療方法は教えていません。獣医師の資格を取得してから各々が自分の師事する先生の治療を手伝いながら学んでいくものですから、同じ病気であっても異なる方法を学ぶこととなります。また、どの方法が絶対に正しいというのもないのです。今日は最新の方法であっても 明日には違ってくるかもしれませんし、自分が学んできたこと、やってきたことが全てでもありません。
違う治療方法を聞かされたとしても、それは誤りとは考えませんし、どこがどう違っていて、どの程度の効果があるのかということに意識は向いています。治療法はいくらでもあってよいわけですし、選択肢が多く存在した方が応用もきくわけです。そもそもが治療法に正しいも誤ったもありません。治療は治療です。
患者の容態と飼い主さんの要求とで選択するだけのことにしかすぎません。そして、それが実際の患者を目にしていなければ、正しいも誤ったも判断しようがないからです。

さて、10歳とのことですが、この10歳という推定も 消耗していることを考慮して割り引いても10歳なのか、見た目の10歳なのかもあります。
仮に実年齢10歳であるとしたのなら、口内炎も慢性化していたことでしょうし、ここにくるまでにまったくの治療歴がないということも私には考えられません。むしろ、相当の治療歴があって、飼い主さんがついてこれなくなってしまっている可能性もあるかと思います。治療の副作用もあったかもしれません。
成体の猫で体重が1、2キロということですから、これは、もうその事実だけで異常な状態であると言えます。飼い主さんから放置されてしまっているのか、猫自身が自らの身上を感じ取ってさまよっていたというような可能性があるのかもしれませんよ。

そのような猫が保護されて、動物病院に連れてこられた場合、病院がまず考えるのは、「飼い主でない者の依頼で治療してしまってよいか」と「どこまで治療してよいのか」があります。前者の方は、今回のケースでは「かってなことして…」というクレームを入れてくる者はおそらくはいないと考えられます。
後者の方の「どこまで」というのが問題なのです。成猫の1、2キロであれば、治療を施しても素直に改善してくることはあまり期待できないはずです。このことは、「さんざん余計な治療までして、お金をすきなだけとったくせに助けることもできなかった」あるいは、「結局、殺された」という評判につながりかねないことなのです。診療料金の支払いでももめることになります。
反対に、どうも助かりそうも無いからと気を利かせたつもりでいると、「野良猫だと思って、なにもしてくれなかった」となります。
依頼者の想像している範囲での治療でないと、どちらに転んでもよい評価とはなりません。ですから、私ですと「どこまで治療しますか?」と直接尋ねたりしてしまいます。でも、これはこれで傲慢と受け取られるようです。まあ、なぜ、そのような事を言うのかの説明はしますが、そんな説明よりも早くなんとかしろよと目が言っていることが多いです。それでも治療代金は、飼い主がいなければ、治療の依頼者に払っていただかないとなりませんので、事前にどこまで治療するかを確認しておかないとなりません。野良猫に青天井の料金は請求できるわけではないのですから。

獣医師もみなみな、飼い主さんや依頼者にていねいにわかるように説明することが上手とは限りません。むしろ、現場優先の仕事ですから、「口を動かすよりも手を動かせ」と叱られてきている獣医師の方が多いでしょう。
患者を前にして、ていねいに説明しているよりは、自らの判断で動いてしまうことの方が多いのかもしれません。
注射は「炎症を抑えるもの」と「四日後の痛み止め」だけなのですよね。なかぽんさんのおっしゃられている「衰弱した躰に次々と薬を入れる治療」にまでは相当していないように感じます。むしろ、「もっと積極的な治療をして欲しかった」という話の方がわかりやすいです。おそらく、もっといろいろな薬剤を投与しても効果は期待できなかったであろうというのは先に述べたとおりです。
1、2キロというのは、大人の猫の体重ではありません。

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