獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-201104-1

猫の風邪
投稿日 2011年3月1日(火)11時36分 投稿者 プロキオン

3月の声を聞くと、少し暖かくなったような気がしますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
人間でも、新型インフルエンザの流行もあったようですが、我が家でも女性陣3名があいついで風邪をひくということが2月にありました。病院で調べてもらいましたが、インフルエンザではなく、ただの風邪ということでした。
「ただの風邪」、どういうことなのでしょうね? 得したのか損したのか、よく分かりません。

さて、猫にもいわゆる「猫風邪」と呼ばれている病気があります。その正体は、猫ヘルペスウイルス感染症であって、「猫伝染性鼻気管炎」という病名のものです。ただし、その多くが別の「猫カリシウイルス」と混合感染して、重篤な症状となっていることが多いようです。
症状とすると、眼結膜の浮腫と炎症、流涙、鼻水、流涎等が主なものであり、カリシウイルスとの混合感染で重篤となったものには、口内炎や糜爛、潰瘍等も併発したりします。
我が国においては、これらの病気は、ひじょうに多く、なかな防圧に向かうという傾向が見られません。一口に言ってしまうと、ワクチンの普及が進んでいないからです。
公園等で集まってきている猫達を見てみると、今の季節ですとかなりの猫達に軽重はあっても症状が見て取れます。暖かいところで冬を過ごすことができるだけでも、症状は軽減できるのではないかと思います。それほどに野良猫達の冬の生活は過酷です。
最近でこそ、猫の室内飼育が推奨されてきていますが、まだまだ、外を自由に徘徊するのが猫の生活だと考えている者は多いですし、また、そういう者に限ってワクチンの利用についても理解が足りないようです。
昨年の秋に開催された「猫感染症研究会」においても、ワクチンの利用が低すぎる、もっと啓蒙して接種率を上げていくことが大切という話とか、毎年ワクチン接種を継続していかないと抗体価があがっていかないという発表がされています。また、別の先生は、抗体を保有している猫においてもウイルスが分離されるケースがあることを報告されました。
ヘルペスウイルスというのは、一旦感染を許してしまいますと、抗体価が上昇している期間は神経組織に逃げ込んで、猫の体内に長く潜み、抗体価が下がってくるとまた活動を始めるという習性があります。
ワクチン接種を毎年実施して、常に高い抗体価を維持していてこそ、ワクチンの効果を得ることができるということになるそうですよ。

では、いわゆる「猫風邪」ではなくて、インフルエンザウイルスに猫も感染するのかということになりますと、一般的には猫は罹らないというように説明されているのではないでしょうか? でも、実は猫もインフルエンザウイルスには感染するのです。H3、H2、H7とかに分類されるインフルエンザには感染することが実験的に認められているのです。肝心な点は、これらのウイルスに感染しても猫は臨床症状を示さない、あるいはかなり弱いということらしいです。
また、H5N1と呼ばれる高病原性ウイルスについても、アジアやヨーロッパでは感染例が報告されるようになってきています。さらに驚いたことには、日本人による猫の高病原性ウイルスによる猫の自然感染例の報告が70年近く前にすでにあるのだそうです。

このような話を耳にしますと、一括りに「風邪」で済ませるのもいけないような気がしてきますね。せめて、ワクチンのある病気には利用してあげたいと思います。

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