獣医師広報板ニュース

フェレット掲示板過去発言No.1400-201011-24

Re:フェレットのワクチンについて
投稿日 2008年2月11日(月)10時00分 投稿者 プロキオン

フェレット専用ということにはこだわらない方がよろしいでしょう。
現在、国内には、フェレット専用に開発され安全性と有効性が証明されたワクチンは存在しません。
ワクチンは生物学的製剤ですから、輸入についてはかなり厳しく制限されています。街の臨床医のレベルでは、まず輸入許可がおりることはありません。
本物のフェレット用ワクチンということであれば、手荷物ということで機内に持ち込むしかないのが普通です。そして、このようなワクチンの場合、海外での購入から日本に到着するまでの時間は温度管理が実施されていないことになります。正規の輸入手続きを経ることなく持ちこまれたものである上に、管理がキチンとされていないわけですから、これをお勧めするというわけにはいかないと思います。

アメリカでもフェレット専用ということになると、FERBAC-Dというワクチンが米国農務省によって認可を受けておりますが、実は、このワクチンは副作用の発現率が後述の犬用のジステンパーワクチンよりも高く、死亡例の報告もあるようです。
一般的に接種されているワクチンとしては、FROMM-D というワクチンが広く用いられており、安全性の点から受け入れられているということです。このワクチンは、日本では入手できませんが、ジステンパー成分としては、日本で流通していたある銘柄のワクチンと同一でした。このため、フェレットの飼育が流行し始めた際には、「鶏の胚由来弱毒生ウイルスワクチン」という隠語を用いて推奨されていました。また、中には同じく隠語として「フロム株」という言い方もありました。これは、ワクチン製造に用いられているジステンパーのウイルス株の名称で、このウイルス株からワクチンの銘柄を指定することができたからです。これらのワクチンは、製造時にフェレットを用いて安全性の確認試験をを実施していたため、信頼性が高かったのです。
現在、この銘柄のワクチンは製造が中止されてしまったので、国内では流通しておりません。したがって、国内で入手可能な犬用ワクチンの中から選択することとなりますが、某メーカーの3種混合ワクチン、あるいは、フェレットに接種して異常の発生がないかどうかテストしてくれたメーカーのワクチンを接種することになると思います。
これらのワクチンにしても 元々がフェレットに対する認可を受けているわけではありませんから、獣医師と飼い主さんとの双方の協議の上での接種ということでないとなりません。

密輸同然のものを接種するということは、飼い主さんにも責任の一端があることになりかねませんので、そこは指摘しておかないとなりません。
さらに、フェレットが輸入されるようになって時間がたっているので、誤解されているようなのですが、フェレットに対して安全性が高いとして推奨されていたFROMM-D は繰り返しになりますが、「犬用のワクチン」です。ネット等で言われている「フェレット専用」というのは、実はこのワクチンのことを指して言っていることがほとんどです。
この製品の名称が有名であったために、「フェレット専用であるかような誤解」が生じてしまっています。犬用であってもフェレットに対して広く接種されていたので、誤解が生じた、そしてさらに、アメリカでこれが良いと言われていたので、日本でもそのまま信じられてしまったということのようです。
つまり、逆に言いますと、「フェレット専用のワクチンでなければ…」というような方は、そのあたりのワクチン事情を御存じない方ということになってしまいそうです。
今回述べたようなフェレットのワクチン事情というのは、実はフェレットの飼育が国内で始まった当時の飼育書には記載されているものもありました。そういう役に立つ本が大事にしまいこまれてしまい、再販もないので、伝わらなくてはならない知識も止まってしまっているのかもしれませんね。

フェレットのジステンパーワクチン接種については、現在国内で流通している犬用のワクチンの中から、選択して接種するということが妥当だと考えますし、フェレットの診察をする獣医師であれば、どの銘柄のワクチンを選択するべきかくらいは承知しているはずですので、心配はいらないでしょう。

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