獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-199901-32

昨日の待合室にて。(ものすごい長文。ごめんなさい。)
投稿日 1999年1月12日(火)18時52分 ゆかちゃん

私の行っている小鳥の病院は待合室と診察室が一緒なので
好奇心と後学の為に、私はいつも他の鳥さんの診察も聞いているのですが
昨日の文鳥さんは、大変でした。

中学生くらいの女の子の説明を聞くところによると…

数日前、くしゃみらしきものをしていて、少し元気もないので
ここに連れて来ようと思ったが、日曜日は休診だったので、
違う動物病院に相談した。すると
「小鳥は他の動物を見てショック死する事があるので
連れてこないで欲しい。」と言われた為、自分だけ行って
症状を伝え、薬をもらってきたので、それを飲ませていた。
しかし食欲もなく、フンもあまりしないので、今日連れてきた。
今日お腹をさわってみたら、固いようだ。

鳥に詳しくない先生は多いですが
患者を診ないで薬を処方するお医者さんがいるなんて!
後ろで聞いていた私は、びっくりしてしまいました。

先生は黙って最後まで話しを聞いてから、
「この子、お尻をぷるぷる振ったりしない?」
「はい、よく、してます。」
「お腹はいつから固かった?」
「今日初めて触ったからわかりません。」
「…この子、女の子?」
「さあ、どっちでしょう。」
「女の子なんだよ、タマゴ詰まりだよ。」

ますますびっくりです。更に先生はお腹を触診しながら
「タマゴの形が変だ。」ともおっしゃいました。
レントゲンを撮り(私も見せていただきました)タマゴが
横に詰まってしまっていることがわかりました。

一緒に来ていたご両親も含め、タマゴ詰まりの説明をした後
「つまり、あなた(女の子)が、お産が難産で苦しんでいるのに
全然検討違いの、風邪薬を飲ませていたのよ。
(お母さんに向かって)そんなお医者さんにお嬢さんを
診せませんよね。」

「この子、とってもかわいがってたでしょう。
メスはね、背中やアタマをかわいいかわいいって
なでちゃいけないのよ。それは、タマゴ産みなさい、産みなさいっていう
サインになっちゃうのよ。」

女の子は泣いていました。
私も涙腺がゆるいもので…。でもウチも女の子だから可能性あるし
最後まで一緒に聞かなきゃ、と、頑張って後ろの椅子で聞いていました。

先生はまず、「家に連れて帰り、ビタミンなどを与え、温めて産卵を待つ」か
「入院させて様子を見て、(指で圧迫する、殻に穴を開け中身を出す等も含め)
産めそうなら産ませる。」という2択問題を出しました。
「この子はもう体力がなくなってきているから
入院しても無事に産めるかどうかわからないよ、死に目に会えないかも知れないよ。」
女の子は両親を振り返り、
「入院させる、ね。」と言いました。両親もうなずきました。

産めそうもなければ、(卵管の出口が開いていなくて、実際産めそうもないらしい。
しかもタマゴが横に入っているし。)帝王切開も考えるが、
文鳥の体力では、「きわめて」成功率は低い。しかもこの子は多分
今日明日が山場だから、ゆっくり考えている暇はない。
と、先生は続けました。
それでも、入院させるか、と。

先生は多分、いずれにしてもこの子は、この1、2日で
死んでしまうだろう、と思っているのだと思いました。
病院ではもちろんベストは尽くすけれど、
1日生き延びて病院で死ぬよりも、
お家で今晩看取ってあげた方がいいかもしれない、と思って
選択させたのだと思います。

女の子は、入院を選びました。
先生が文鳥を籠から出し、「頑張りますってお嬢さんに言いなさいっ」
と、女の子に向けました。
「…アタマ触ってもいいですか?」
「今はいいよ。ガンバレってなでてあげなさい。」
私は待合室を出ました。

何か、自分の事じゃないのに、すごく辛かったです。

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