獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-200612-14

コキンメフクロウの眼
投稿日 2006年11月9日(木)11時56分 投稿者 プロキオン

本来、このような掲示板では診察していない者が、直接病名をあげてしまうということ
はやってはいけないことですし、現在診療なさっている先生に対してもマナー違反とな
ってしまいますが、遠まわしな発言でかえって誤解が生じるといけないので敢えて。

私が述べている「瞳孔の形がいびつになって、虹彩の色が変化する病気」とは、白血病
のことです、それも私が経験したものであれば、「リンパ性白血病」の方です。

瞳孔の形が不整形(三角形だったり、楔型だったりすることが多い)になったり、虹彩
の色が黒から、銀色がかかった青とか、灰色になるケースがあります。このような変化
の写真は農山村漁村文化協会だったか、「原色、鶏の疾病」というようなタイトルだっ
たと思いますが、農協が農家向けに取り扱っていた本に図版があったと思います。
もっとも、この本自体が、すでに20年くらい前に「原色」ではなく「カラー」という
ようにタイトルも変わり、図版も変更になってしまっています。
おそらくは、他の鶏の疾病に関わる書籍でも、眼の変化の部分は省略されてしまってい
るのではないかと思います。
それが何故かというと、リンパ性白血病に遭遇すること自体が、今の養鶏の世界ではか
なり稀なことになってしまっているからです。
私達が学生の頃には、「リンパ性白血病(LL)」と「マレック氏病(MD)」との鑑
別点・相違点というのが、国家試験対策で重要とされていましたが、すでに、その当時
からこの疾病が過去の疾病になっていた事情があります。
その事情というのも、LLが発生する好発日齢があって、採卵鶏ですら、その日齢とい
うか年齢まで飼育されていることが稀となっていたからです。まして、ブロイラーのせ
いぜい2ヶ月の命というのでは、お目にかかれるはずもなくなっていたのです。

そもそも、私が遭遇した鶏というのも、採卵鶏でもなく、ブロイラーでもなく、闘鶏用
に飼育されていた軍鶏でした。ちょっと特殊な用途でしたので、3〜6歳くらいの鳥も
飼育されていたということになります。それ故、本来であればお目にかかれない疾病に
も遭遇したということになります。

「リンパ性白血病」と言っても、鳥類にはリンパ節はなく、骨髄において腫瘍化したリ
ンパ細胞が、リンパ組織や細網組織の発達した臓器(肝臓、脾臓、腺胃乳頭、ファブリ
キウス嚢、パイエル板等)において顕在化して見られるというようなことになります。
マレック氏病の方であれば、とくに肝臓や脾臓の腫大が著しくなりますが、LLの方で
は骨髄病変が先行して有意となります。

リンパ性白血病を想定するのであれば、まず大前提として、コキンメフクロウにこのよ
うな疾病が存在するのか、ウイルスに対する感受性があるのかを議論しなくてはなりま
せんが、
年齢、肝臓の腫大、虹彩や瞳孔の変化を考ええると、鶏であれば、このような疾病を想
定して検査をするというお話になるということなのです。

鶏のように群飼育をする経済動物であれば、治療という概念はありません。損失をでき
る限り抑制するためには、早期淘汰こそが選択されなくてはならないからです。
LLの検査というのも、生前診断であれば、あまり有効なものはありません。血液塗抹
標本中で腫瘍細胞を捜すことになるくらいですが、これは末期にでもならないと精度が
低いです。普通は、怪しい個体を選んで病理にまわすこととなります。
しかしながら、眼に異常が生じるタイプのものは、すでに慢性化していて病気となんら
かの折り合いをつけているふしがありまして、そのままいけるようなところがあります。
少なくとも、急性の転機とはならないようでした。
( 一般的には淘汰されるので、正確な話ではありませんが、農家ではなく個人がたま
たま1〜2羽飼育しいたというようなところでは、特定の臨床症状を呈すことなく死後
になって調べて発見されるというケースもあったようです。 )

インターフェロンは、現在国内では、猫・犬・牛ということで入手可能ですが、粉末で
あれば、牛用ということになるのでしょうか?
もちろん、フクロウへの摘要認可はありませんから、獣医師の先生と相談の上慎重にお
使い願います。インターフェロンは、免疫の補助ともなりますが、場合によっては、免
疫抑制に作用してしまうこともあります。犬用のインターフェロンであれば、免疫抑制
というか、アトピーへの摘要をメインとして販売されているくらいですので。

眼よりも肝臓が気にかかるというのは、私も同じです。こちらの方が転機を左右するこ
とになるでしょう。

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