獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-200612-49

re: 原因とされるのは…、
投稿日 2006年11月6日(月)12時21分 投稿者 プロキオン

こんにちわ、さくらさん。

ネズミチフス菌というと、センセーショナルに聞こえてしまいますが、これは単純に呼
称であって、正式な名称ではありません。
Salmonella tyhimurium が本来の名称でして、サルモネラが示すように腸内細菌の一種
ということになります。サルモネラの名前が示しているように、通常は食中毒の起因菌
として知られています。かつてはネズミが媒介すると考えられていたので、ネズミに由
来する腹痛を伴う腸炎ということで、ネズミチフス菌という呼称になったのでしょう。
しかし、現実にはネズミなど居なくても菌は存在し続けていますし、この菌による食中
毒もも減少していません。食品の取り扱い方如何の問題なのです。

つまり、この菌を腸内に保菌している者が、いい加減な食品の取り扱いをしていると、
常に食中毒が発生しえるということなのです。
また、保菌している者すら、その事実に気がついていないことも多いのです。保健所が
口をすっぱくして注意をしているのも、そんなところに原因があるのです。
例示を人間としましたが、犬や猫、鳩でも鶏でも自分では気がつかずにこの細菌に感染
していることがあるわけで、大元の原因というのは、まずもって分からないことが普通
なのです。
また、個体から別の個体への感染というのは伝達に時間がかかりますので、一度に大量
に感染するということは起きません。
食中毒と言ったように、経口的に一度に多くの口に入ったということが前提として必要
になります。これがスズメということになれば、餌が汚染されていたということがまず
考えられなくてはならないと思います。
動物衛生研究所という国の試験研究機関があるのですが、そこの飼料安全部における検
査対象の細菌はサルモネラが一番にあがってきます。

私が家畜保健衛生所で鶏だけでなく豚や牛の検査をしていた頃にも、この細菌はよく分
離されていた細菌であって、ことさら珍しいものでもなかったです。大量死であれば、
それなりに汚染源が存在していないと説明がつきません。
私が気にかかっているのは、なぜ正式な名称を用いずに、ことさらネズミチフス菌とい
うようなセンセーショナルな呼称を持ち出してきたかなのです。そんなことをしている
と、なぜ大量死が発生したのかという本来の原因がおろそかになって、分離された細菌
のところで原因追求が終わってしまうからです。
「チフス菌が犯人ならしかたないかという雰囲気」をかもし出す必要性は、どこにもな
かろうということなのです。その先に進んでもらわないと、原因究明にはなりません。

先日も、文部科学省の方でカメの飼育をサルモネラ保菌の観点から控えるような指導が
ありました。
仰せのとおりカメにおけるサルモネラの保菌率はかなり高いと言えると思います。
が、しかし、ミドリガメなどでは繁殖元ではほとんどサルモネラをもっていないという
報告もあるようで、日本における流通過程での調査も必要ということになります。
これを実施しないとアメリカの繁殖先が正しくて日本の流通に原因があるのかがわかり
ません。原因の所在が不明なまま、とにかくカメを飼育するのはよくないということだ
けがまかりとおっていることになります。
どちらの言い分に利があるというのではなく、ただ本当のことが知りたいということな
のです。そこから先は自分の頭で考えますので、とにかく事実を知りたいということで
す。
ネズミチフス菌という呼称を用いると、やっぱり、そこまでのことしか考えていないの
かということで、その先を知りたい私としては、いささか残念なのです。


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