獣医師広報板ニュース

動物の愛護掲示板過去発言No.6000-202111-19

Re2:3月11日なのだけれど
投稿日 2013年3月13日(水)12時18分 投稿者 プロキオン

本日は、3月13日。つまり、3月11日から2日経過しているわけなのですが、3月11日に朝から東北大震災をとりあげていたワイドショーの今朝のトップニュースが、パンダの交尾でした。
僅か2日で、これだけガラッと変わってしまうというか、いかに3月11日が記念日化しているかということですね。
死者が15000人以上で、いまだ見つかっていない行方不明者を合わせて2万人を少しきる数です。自宅に戻る事のできない被災者の数を考えれば、記念日化してよいわけがなにのです。どこにもまだ終わった事としてよいだけの理由がありません。
が、しかし、昨年の3月11日から、当日にサイレンや鐘を鳴らし、みなで黙祷しましょうと盛んに盛り上げています。とくにマスコミがこぞって、そのような機運にしていっています。現在進行中のことであって、ぜんぜん終わったことではないのにもかかわらず…。

いったん記念日となってしまえば、たとえ10万人の人々が亡くなったことでさえも、忘れられていくことになるのです。
そこにどのような人が暮らしていたのかを簡単に忘れ去ってしまってよいとは、私は考えていません。だから、阪神大震災のときに、母親の骨を鍋に容れて持ち歩いていたという少女の話を折にふれて思い起こすようにしています。今年も彼女の安否はわからなかったと。東北であれば、大川小学校の話であり、首を括った酪農家の話であり、唐突に妙な移動のあった牛達であり、放射能検査にひっかかった牛のことでもあります。

わずか2日でパンダの交尾に追いやられてしまうというこの国のマスコミの取り上げ方というのに疑問を感じざるを得ないのです。何があったのかを記憶し、伝えていくということが、おろそかにされて良いはずがないのです。

「おもらい動物園」というあだ名のついた動物園が富山県にあるそうです。
何故、そのようなあだ名がついたのかというと、ときあたかもコアラの来日ブームの頃の開園なのですが、当時の日本の動物園は、国内の野生動物を展示動物とは考えていませんでした。
それでも関係各所から保護を依頼されたりしてはみたものの、野生に復帰させることができない個体をバックヤードに沢山抱え込んでいました。
その動物園も、某有名動物団体が動物園の基本計画にたずさわっていたのですが、出来上がった計画でみると、多摩動物園クラスで飼育係りも100名くらいは必要という物で、とても市の財政で運営できる範囲を超えていたということだったそうです。それで、財政規模にそった身の丈にあったものへと方向転換され、展示動物も国内の野生動物へと変えたのだそうです。
そのために、各地の動物園で持て余されていた保護野生動物をまわしてもらえないだろうかと声をかけたところ、こちらも助かります、ということになって、いつしか「おもらい動物園」と呼ばれるようになってしまったとか。
この動物園には、ライオンやゾウ、ゴリラ等の目を引くスター動物は今もいないのだそうです。
この動物園は、今後の動物園のあり方を示しているのかもしれません。

と言うのは、ノアの箱舟であるはずの「動物園」というところも、かつては、先にあげたようなスターとなる動物を集め展示することが目的でした。でも、本当に守らなくてはならない動物というのは、必ずしもスター動物とは限らなかったはずなのです。それが、人間の趣向によって、人気のある動物、耳目を集めることができる動物に偏ったノアの箱舟となってしまっていたわけです。
このために保護されてこずに減少に至ってしまった動物もあったはずですし、また、今、この時に至って、ゾウやゴリラ等も野生個体の減少から導入に著しい困難を伴うようになってしまい、盛んにブリーディングローンが実施されるようになっています。今、飼育している個体が老齢化して亡くなってしまうと、このようなスター動物さえも不在となってしまう動物園が出てきてしまうというちょっとした未来が、すぐ先まで来ていることになります。

まあ、全部が全部そのまま手をこまねいてみているだけということもないでしょうし、なにかしらの手をつくすことでしょうから、いきなりバタバタと動物園から、スター動物がいなくなるということもないのでしょうが、そのようなスター動物がいないのにもかかわらず、国内野生動物の展示で運営がなりたっているというこの「おもらい動物園」は、なかなかやるじゃないかと思うのです。

死者の数が多くても、新しい出来事に負け、死者の話であってもニュースバリューがなくなればパンダの交尾に負けというマスコミの取り上げ方は、ノアの箱舟に乗せられている動物が偏ってしまっていることに気づかない私達に似ています。
そして、そのノアの箱舟さえも、乗せた動物達を守りきれるのでしょうか? とくに我が国の動物愛護は、感情優先の声が大きい傾向があって、それでよいのだろうかという不安がつきまといます。
マスコミによるニュースの取り上げ方と、ノアの箱舟に乗せる動物の選び方には、共通しているものがあるような気がしてなりません。私はそのような流れに対して不満なのですが、残念ながら、竿をさすまでに至りません。
でも、そんな流れに乗らなかった動物園もあったということは、良かったです。

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