獣医師広報板ニュース

動物の愛護掲示板過去発言No.6000-202111-267

Re4:地域猫条例化の動き
投稿日 2015年8月7日(金)10時57分 投稿者 プロキオン

>下に例を挙げた横浜市でも、体制が昨年から行政に移り
手術済みの野良猫は耳カット、術前術後の写真を提出、頭数は6000匹5000円、期間は確か5月スタートです

補助金を出す行政の立場からすれば、避妊去勢手術の前後で、たしかに手術が実施されているであろうという証拠は欲しいでしょうね。
1頭5000円で6000頭なら、3000万円ということになりますね。獣医師が手術しましたと署名するだけよりも、もっと素人が見てもわかる証拠が欲しい。そうでないと納得してくれない人達もいるというのは、想像できないわけではありません。

>耳カット、獣医師会がよくOKしたものだと思いましたが、プロキオンさんのお話をお聞きするといろいろあったんでしょうね。

そちらの内情までは分かりませんが、議論や葛藤はやはりあったのではないでしょうか。
そもそもが、毎日キチンと世話されている人であれば、10頭くらいまでなら個体識別はつくはずだと思います。私の病院へ来ている方であれば、すでに1人で50頭くらいは避妊去勢の手術をしているのですが、全ての猫に名前がついていて、来歴が頭に入っています。
他の方でも、個人でやっている人なら、ほぼ呼び名があって個体識別ができています。そういう人達なら、猫の耳をカットしなくても、手術済みか否かは把握できているのです。

問題は、複数の人達が世話をしていて、台帳管理をせずに個体識別もできないところです。
そのようなところでは、捕獲器でつかまえた猫が手術済みか否か判別ができませんから、外見でわかる目印を必要とせざるをえません。
概ねは妊娠している猫から捕獲器に入ってしまうものなのですが、お腹が大きくない猫が入ってしまった場合に判断に困ってしまうのでしょうね。
耳カットのような印を必要としているのは、そういう人達なのだと考えています。

個体識別の術としてマイクロチップがありますが、そういう人達はこれに否定的です。理由は金額と野良猫では読み取りができないというものです。
けれども、スティック型の読み取り器であれば野良猫が相手でも使用できますし、県の愛護センターのようなところでは、捕獲されて緊張している犬相手に檻の外からマイクロチップの有無を調べることになりますので、そのような読み取り器を使用しています。
要はお金の問題で、マイクロチップにかかるお金で1頭でも多くの手術をしたいという説明になってしまうのですが、だからこそ、耳をカットするという結論には納得しがたいものがあります。

そして、TNRの一番の問題点は、その後の猫の生活です。私は猫を飼育していて飼育頭数が増えていくにしたがって、さまざまなトラブルが発生することを知っています。疾病や怪我・事故等々が目に見えて増えてきます。
1つの公園なり団地なりで、複数の猫達が生活していると、力関係もありますが、必ず皺寄せを受けて異常をきたす猫が出てくるものです。片っ端から涙と鼻水というのも珍しくありません。
飼い猫の寿命とは比較しようもありません。
つまり、「そういう猫達は幸せなのか」という根源的な問題なのです。公園でも団地でも1つの餌場には、定員があるようです。他所から猫を捨てに来たり、猫自らが流入してきたりしても、弱いもの・病気のものから姿を消していかざるを得ないのです。
個体の管理ができていない・していないというところが、「耳のカットが幸せの印」と言っても、それは違うとしか言いようがありません。
個人においても、団体においても、能力には限界があります。そのキャパシティーの範囲において手を差し伸べるというのが大原則であって、悪戯に数を誇るべきはないと考えるのです。1つの場所で猫の数が増えれば増えるほど、消え去って言っている猫の数もそれだけ増加していくことになります。自然淘汰や自然消滅なら、心が痛まないというわけにはいかないのです。人間が関わった以上、それは決して「自然なこと」ではないからです。

>実際は、野良の手術をやりますとなっていても、料金は飼い猫と同額とされれば、持ってくるのは患者さんの家の庭でお腹が大きくなっなってしまった野良(外猫)ぐらいでしょう、

本来、触れることができない野良猫というのは、治療の対象となりえません。触らずに治療しろというのは、無理が有りますよね。
また、当然、食欲もなくなっているでしょうから、薬剤の投与にも支障があります。
触る事ができて治療対象となるのであれば、それは外飼いの猫ということになると考えられます。
本当の野良猫であれば、逆に、飼い猫と同じ料金では病院としては割に合いません。むしろ追加料金を請求したいのが本音です。まあ、そこはグッと我慢で同一料金で実施していますが、そこを理解されている方は少ないです。


>“地域猫“元磯子区の黒澤さんに言わせると、獣医の先生も地域の住民の一人になるそうです。
今週末に黒澤さんのセミナーを聞きに行きます。相変わらず横浜では開かれないのですが、、、。

獣医師も地域住民の1人とは、さすがにうまいところをついてきますね。
他所からの捨て猫ということもあれば、黒澤さんもいろいろ言われてしまいますからね。それでも、黒澤さんが掲げた旗印というものは、間違っていないと思っています。都合の良い箇所だけ利用してしまう人達がいるからでしょう。
私は野良猫達のことに真剣に取り組んでくださった方だと評価しております。

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