獣医師広報板ニュース

動物園・水族館掲示板過去発言No.8000-201910-16

Re3:イルカの追い込み漁について
投稿日 2015年6月16日(火)16時32分 投稿者 プロキオン

この問題にかかわりのある内容なのですが、昨夜テレビ朝日のTVタックルで動物園・水族館協会が世界協会からの勧告を受けてイルカを購入しないのは何故?というのを放映していました。
簡単に言えば、希少種の繁殖は世界的な規模で実施しないとならないので、その協力が得られなくなれば日本だけでは希少種の保存や繁殖は困難になるという理由でした。
ここまでは、すでにさんざん報道で伝えられているとおりなのですが、「そもそも動物園とか水族館という存在が必要ない。イルカや動物を檻に閉じ込めている事が間違いである。動物のことを知りたいのであれば、映像で充分である。」と動物の権利を主張している団体の女性理事さんが主張していました。
この意見にまっこうから反論していたのが、元旭山動物園の園長さんをされていた小菅政夫さんでした。

女性理事さんは、さかんに「自然では」「野生では」を口にされていましたが、いや、野性下で自然に任せていたのでは、確実に滅んでしまう動物達がいるわけで、「檻に閉じ込められて、そこで一生暮らしていかなければならないのは、可愛そう」という発想のまわりから一歩も離れようとしていませんでした。

イルカやクジラも海に住む人類という観点から始まっている話であって、小学生並みの高い知能を有しているから監禁してはならない、殺してはいけないという理屈です。
実際に「小学生並みの高い知能」という件が、根拠がありません。イルカやクジラの知能を測る術はありませんし、また、それを犬や猫と比べる事もできません。
牛や豚にも芸を教え込む事はできますので、その成果をもって、中学生並みの知能があるから食べてはいけないと言われたら、彼等はいったいどうするというのでしょうか?
欧米人のハートには、イルカやクジラは波及するから、寄付が集りやすいからに反対活動のターゲットにもってこいというのに過ぎません。

実際のところ、太地で捕獲されたイルカのうち国内施設に販売されているのは、2〜3割にすぎず、過去5年で12カ国に輸出されています。5年間の捕獲数760頭のうちの大半は海外へ輸出されてしまっているのですから、日本協会に所属する水族館がイルカの購入をやめたところで、この問題が解決するとも考えられません。はたして、世界協会はこのことを認識しているのでしょうか?

話しをテレビ番組に戻しますと、某N獣医師が小菅さんにむかって、「動物のいない動物園」というのをごぞんじですか? と口を挟む場面がありました。
希少種の動物の遺伝子を液体窒素中で保存している施設のことを指して言っていました。
が、そのような施設はすでに国内にもあるわけでして、国内で死んだ動物達も必要性のあるものは液体窒素やディープフリーザーの中に体細胞が保存されています。
N獣医師は、希少種の保存についてであれば、なにも動物そのものを展示する必要は無いということを言いたかったようなのですが、彼もなにか考え違いをしているように感じました。
ゴリラとか虎とか、動物園ではなかなか繁殖してくれないデリケートな動物達にしても、決して遺伝子の容器としてだけ「生」を受けたわけではありません。
血統や戸籍をみたうえでお見合いをさせても、繁殖できるわけではありません。とくに類人猿なんて遺伝子の相似性からいけば、人間とほとんど同じですしね。
ある雌ゴリラは、何度もあちこちの動物園に移動させられてお見合いさせられましたが、うまく繁殖に結びつきませんでした。どうも死別した雄ゴリラのことが好きだったようだと飼育係さんが雑誌に書いておられたようです。
動物とじかに接して得られるものは決して少なくありませんし、身近な者ほどそれを承知しているように思います。
生きた動物達から子供達を遠ざけて、映像や遺伝子だけで充分とする考え方には、私は賛成できかねますし、むしろ間違っていると思うのです。

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