掲載期間:2018/05/07-2018/07/06
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獣医師広報板ニュース

動物園・水族館掲示板個別発言

アッパリアスな葛藤
投稿日 2015年7月23日(木)11時07分 投稿者 プロキオン

ちょっとタイトルを変更しました。ビーパルというアウトドア雑誌(本年8月号 No.421)に角幡唯介さんが連載している記事の紹介です。
執筆者は、元朝日新聞記者ですが、現在はノンフィクションライター・探検家です。

角幡さんは、現在極北を踏破するためにシオラパルクという所に滞在しており、冬の極北踏破のための干し肉を作っています。現地のイヌイットが捕獲して食糧としている生き物について、他所者の自分がはたしてどこまで捕獲することが黙認されるだろうかという点でその境界線がどの引けるのか? 価値判断の基準はどこなのか、これを話す相手によって少しずつ異なってしまうようだということを述べています。
アッパリアスというのは、ヒメウミスズメの現地語であって、その辺りに線で引いているというお話。イヌイットの村で暮らしているところへ、太地町のイルカの追い込み猟が原因で世界動物園水族館協会からの除名が通告されたというニュースを耳して、「牛や豚や羊は平気で食べるけど、イルカやクジラを殺す事は残酷な事なのか?」と考えた。
以上が前段というか以後のお話の前提です。

「脳の容量が小さくて認知能力の低そうな動物なら殺傷へのハードルが低く、反対に認知能力が高い動物の殺傷へのハードルが高いのは、その痛みや苦しみを私たち自身が想像しやすいからだろう。
境界線をどこにおくかはともかく、我々は認知能力を物差しに、自分達からの距離が遠い近いで動物の命の判断をしている面がたしかにある。
要するに、殺される苦しみを私たち自身が想像し得るか否かという観点により、動物を擬人化し、差別しているわけだ。」

「どの動物なら許容でき、どの動物を残酷と捉えるかは、全人類に共有された物差しによって客観的に決まるわけではなく、個々人からみた主観的な距離感によって決定される、曖昧でいい加減なものにすぎないという事だ。私は、アッパリアスなら許容されると勝手に判断したが、それは誤判断であって、イヌイットはもしかしたら…(中略)…獲物に対する平等な感覚をもっているかもしれない、」

「牛がOKで、イルカはNGというのは、たとえそれがどのような正義の体系に貫かれていても、動物の種類を恣意的に選別し、そこで差別化した時点で、イルカを捕る人達と同等の地平に立っていることになる。何らかの基準で動物を差別した瞬間に、所詮われわれは全員、罪作りな存在にすぎなくなるし、そして生きているかぎり、基本的にこの罪悪から逃れる事はできない。
だとすれば、他人がどの動物を捕って食べようが、絶滅が危惧されるなどの特別な理由がないかぎり、基本的には非難することは難しいはずである。」


オーストラリアでは少し前にコアラの間引きがニュースになりましたが、昨日には猫をオーストラリアから駆除してしまうという計画のニュースが流れました。猫は元々オーストラリアにとっては移入種の動物であって、猫によって絶滅に追い込まれてしまった野生動物が多くあるというのが、その理由だそうです。
コアラも絶滅が危惧される系統がある一方で特定の系統だけが増えているということが間引きの理由でした。
ネットでは、「クジラは駄目でも猫ならいいのか?」とか「SSの出番だ、何をしている」とか批判の書き込みが相次いでいますが、批判の書き込みをしている人間達の心の距離が見てとれる書き込みが多いようです。
その一方で、オーストラリア政府の施策が、どこまで科学的なものなのだろうかとも感じたりもします。

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