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アウェイ・フロム・ハー 君を想う      


2006年 カナダ ロマンス   

<監督>サラ・ポーリー
<キャスト>ジュリー・クリスティ , ゴードン・ピンセント

<ストーリー>
結婚して44年になるグラント(ゴードン・ピンセント)とフィオーナ(ジュリー・クリスティ)は、ゆったりと落ち着いた生活を楽しんでいた。しかし、妻フィオーナには、アルツハイマー型認知症の症状が出始めていた。次第に症状が重くなる彼女。二人で相談した結果、フィオナは、老人介護施設へ入所することを決心する。入所の朝、はじめの30日間は、面会禁止のため、二人は、辛い別れをするのだった・・・。

<感想>
自然に囲まれた環境で、自由気ままに、老後を迎えていた理想的な夫婦に忍び寄る悲劇・・・。切ない話でした。
誰にでもいつかは老いがくるというのに、いつもその事を忘れて、もしくは忘れたふりをして生きている私たち。でも、こうして描かれると、改めて、老いるということを突きつけられたように感じて、辛かったです。

冒頭の、フィオーナに現れる認知症の症状が悲しいです。きっとこんな感じで、物事の記憶が消えていってしまうのでしょうね。また、その事実に自分自身が気がついてしまうということが、何より辛いだろうなという気がしました。

映画は、フィオーナが老人ホームに入所することになった経緯から入所後の様子を丁寧に追って行きます。
それと同時に、夫のグラントの、現在進行形の行動も、時折映し出されます。彼は、いったい何をしようとしているのか・・・?

施設によって、いろいろな規則があるのでしょうけれど、フィオーナの入った施設は、入所当初30日間は、面会も電話も禁止。入所者が混乱しないように・・・と言うことですが、これは、辛いですねぇ。特に、彼ら夫婦の場合は、まだそんなに症状が重くないように見えるので、特に、辛そうでした。
そして、初めての面会日の衝撃・・・。そして、その後のグラントの葛藤。
見ているのが辛くて、もう何も言えません。

でも彼には、彼女に対するある罪悪感があって、その事を考え合わせると、ひょっとすると・・・という疑惑が浮かんだりします。でも、その彼の気持ちもよく分かりました。私もひょっとしてと、思ったりしてしまいました。
とはいえ、グラントの忍耐力には驚かされました。
だって、これは、相当辛い話ですよ。

そして、彼は、ある決断をします。ちょっとこれは、驚きでした。でも、それが、みんな丸く収まること・・・なのかも知れませんが・・・。彼女を妻としてではなく、一人の女性として、彼女の幸せを願ったと、いうことでしょうか。

でも、現実は、皮肉にも・・・。
このラストは、人生の悲しさと、苦さに満ちていました。

監督・脚本は、なんとあのサラ・ポーリー。原作「クマが山を越えてきた」(アリス・マンロー)がちゃんとあるとはいえ、弱冠27歳で、どうしてこんな映画を作れるのでしょう。すごいですねぇ。彼女は、この作品で、アカデミー脚色賞に、ノミネートされました。

主演は、ジュリー・クリスティ。彼女の演技も、これまたすばらしい。認知症の症状が出始めて混乱した表情も見事だし、入所前に髪を結い上げて、キリッと正装した彼女は、悲しみの中にいても、何処までも美しかったです。そして、施設で、入所者の男性の世話をする優しげな表情。どれひとつとってもすばらしかったです。彼女も、この演技で、アカデミー賞ではノミネート。GG章では、主演女優賞を受賞しました。
夫役のゴードン・ピンセントも、じっと一人で、悲しみや、怒りや、そして愛情を抱え込んでいる感じがしてよかったです(^^)。

この映画は、年齢が上になるほど身につまされて、見ることの出来る映画だと思います。
つい最近私も、奥さんが認知症になってしまって、夫婦そろって老人ホームに入所した親戚のことを聞いたばかりだったので、他人事でなく映画を観て、胸が苦しくなる思いがしました。 (2009,07,30)



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