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夕凪の街 桜の国      


2007年 日本 戦争

<監督>佐々部清
<キャスト>田中麗奈 , 麻生久美子 , 吉沢悠 , 中越典子 , 金井勇太 , 粟田麗

<ストーリー>
「夕凪の街」昭和33年。平野皆実(麻生久美子)は母親フジミ(藤村志保)と広島で暮らしていた。皆実は、会社の同僚(吉沢悠)とほのかな思いを寄せ合っているが、原爆のトラウマから抜け出せずにいた・・・。
「桜の国」平成19年、東京。定年退職した父親(堺正章)と暮らす七波(田中麗奈)は、父親の行動に不審を抱き、密かに後をつける。すると父は、広島に向かい、いろいろな人を訪ね歩くのだった・・・。

<感想>
原作は、平成16年度文化庁メディア芸術賞マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した、こうの史代の同名マンガです。
マンガが原作とはいえ、心に深く迫ってくる作品でした。

原爆投下から現代に至るまで、その後遺症や、心の傷に苦しむ人たちの物語です。

特に、「夕凪の街」の悲しさ、切なさ、悲惨さは、胸をつきました。
「うちらは誰かに死ねばいいと思われた・・・」
「原爆は、落ちたんじゃなくて、落とされた」
「13年も経ったけど、やった、またひとり殺せたとちゃんと思ってくれてるか」
などなど、悲しい言葉が続きます。

戦争をやめさせるために、投下したと勝者は言います。
これが、ジェノサイドでなくて、なんだと言うのでしょうか。
あの国は、よその国を非難できる国なのでしょうか。
敗戦国とはいえ、日本は、おとなしすぎたのではないでしょうか・・・。

「桜の国」は、舞台を現代に移して、もう戦争の影すらない日本を描いています。
でも、原爆は、人の心にまだ影を落とし続けているのでした。
そのことを知らされることなく育ったヒロインの七波は、自分たち家族のルーツを知って心に刻みつけてゆくのでした。

この年のブルーリボン主演女優賞を獲得した麻生久美子の演技に泣かされました。
明るく生きようとしながらも、心の奥底には、暗い記憶が渦巻いていて、その呪縛から抜け出せない苦しさ。そして、幸せをつかもうとしたその時に、無惨にも病に倒れてしまう彼女。
その健気(けなげ)さ、そして、自分の運命をしっかりと見定めた強さが切なくて、もう号泣です。
彼女の優しく、はかなげでありながら、強さを秘めた演技がすばらしいですね。(2008,10,06)



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