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「冬の旅人」   
皆川博子 02.07.04



芸術の悪魔に魅入られた女は、失われた「あの絵」を求めさすらい続ける。
欲望と情熱が渦巻く革命前夜の露西亜。
「死の泉」から五年、待望の大河歴史ロマン(帯より)


すごいですね、この皆川博子という作家さんは・・・。
これだけの分量の小説を飽きさせることなく、読み切らせてしまうのですから。その文章力は、すばらしいです。

話は、ロシア革命前後。しかも、主人公は、まだ10代の日本人の女の子、環(たまき)=タマーラ。何故この子が、この時代に、遠いロシアという国にいたのかが、徐々に解き明かされてゆきます。
幼い頃に出会った絵によって、様々な運命に翻弄されつつも、それでもたくましく生き抜くタマーラが、帝政ロシアの崩壊と言う歴史的事実にも巻き込まれてゆくのです。
国籍の違い、宗教、迷信、そして彼女自身の体の中から巻き起こる狂気のような力、それらによって、数奇な運命を歩まざるを得なかった彼女の半生。久々に、のめり込んで読みました。
カタカナ名前に弱い私にも、タマーラに関わるいろいろな人がはっきりと区別できるほど、一人一人の個性がくっきりと、そして、生き生きと描かれています。
この時代のことには、疎いので虚実がよく分からなかったのですが(歴史は嫌い!(^^;)、ニコライ二世とその家族、ラスプーチンなど、歴史上有名な人々が、彼女の近しい人として登場します。