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「コカイン・ナイト」   
J・G・バラード 02.07.25





「私を含めて、バラードが英国ナンバー1の現代作家であることに賭けるものは多いだろう。
この作品は、彼の業績に新たな輝ける側面を付け加える。
バラード・・・驚くべきミステリー作家」John Sutherland,Sunday Times (折り返しより)

凶悪殺人の罪に問われた弟の無実を示すべく、旅行作家は地中海の高級リゾートをさまよう。
だが、そこは倦怠と欲望のみが君臨する、恐るべき迷宮だった…。
名作『結晶世界』『クラッシュ』を超え、サイコ・サスペンスとスペキュラティヴ(思弁的)・フィクションが劇的に融合する。
(「BOOK」データベースより)

***
翻訳物は、苦手で、あまり読まないのですが、今回も、ちょっと苦労しました。

弟が、5人を殺害したという驚くべき連絡を受けたリチャードが、事件の起こったリゾート地−−−仕事をリタイアしたイギリス人たちが住む地中海の町−−−に、急遽向かうところから話が始まります。
その地で、弟の無実を証明しようと奔走するうちに、リチャードは魅力あふれるボビー・クロフォードに出会う。
クロフォードは、スポーツ万能で、人当たりもよく、老若男女を問わずに人を魅了してしまう。
そんな彼の存在によって、この地は、活発に活動をしていることがわかってくる。しかし、人々が生き生きとしている理由は、他にもあった・・・。
弟の無実を証明しようとしていた主人公が、クロフォードの魅力に引きつけられて、新しいリゾート地の責任者になることによって、弟の事件の真相が、徐々に分かってくる。そのあたりは、なかなかよくできていました。 死んだように静かな街を活気づけるのに必要なことは、”犯罪”。
目指すは、犯罪を基盤とした究極の社会。
少々の犯罪が、社会の活動力になり、それに伴って、経営者に利益をもたらす。
この考え方は、ちょっとした衝撃でした。
一つの、閉鎖されたコミュニティーだからこそ起こってしまった事件。集団心理をうまく使ったサスペンスです。
しかし、こんなにもうまく人の心理をうまく利用できるものかと、少々疑問でした。一種の集団ヒステリー状態かな?。

彼の著作は、スピルバーグの監督した「太陽の帝国」などがあります。