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「紫の領分」   
藤沢周   02.11.12




「世界の限界という奴から脱出したかっただけだ、ほんの一ミリでいいんだ、一ミリで・・・・」
二つの家庭の間で二重生活をおくる数学教師
日常の底を抜く
狂気と虚無の激しい誘惑-----
芥川賞作家の傑作長編小説。
(表紙より)


仙台と横浜で二重生活を続ける手代木。
鞄や、職場のロッカーには、家庭が二つあることを隠すための下着や、コートがしまわれている。
そして、新幹線での移動時間には、何かに激しく吠えつく犬を探し、紫の稜線を見る・・・。

中年男の不可解な胸の内を淡々と描いています。
4,50歳代の男性の自殺が、一番多いそうです。
経済的なことももちろんあるでしょうが、こんな精神的な不安定感から、そういう状況に陥る人も多いのかもしれません。
何もかも放り出してしまいたくなったり、また、自分を客観的に外から見下ろすと、絶望感にうちひしがれるのかも。
若さと老いの中間で揺れる男性の更年期障害のような気もしました。