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「夜の寝覚め」   
小池真理子   03.02.17

    


人生の秋を迎えた女達のせつないため息、情熱の輝き。
美しいエロスの季節を迎えた大人限定、珠玉の短編集。
結婚十年目の秋、小夜子は初めて恋を知った。夫の友人と愛し合って十五年。
人知れず燃え上がるプラトニックな関係。
行き着く果ての見えない男女の切ない性愛を描く「タンポポ」。
美々子は控えめな綾子おばに隠された色香を感じていた。
母が死んでほどなく、深夜に睦みあう父とおばの姿を目撃してから三十年。
何も語らないまま、叔母の命は桜の花びらとともに尽きようとしている・・・
表題作「夜の寝覚め」ほか、美しい人生の秋を生きる女達のエロスと熱情の作品集。 (帯より)



ここに登場してくる女性達の年齢は、ちょうど著者小池さんの年齢ですね。彼女は、この年代を、最後の女性の輝きの歳として描いています。今までの小説の主人公、特に、男性と不倫に落ちたりする年齢は、三十代までが多いと思いますが、これを読むと、その年齢層がまた十歳上がったのかなと思います。たしかに、今の女性は、四,五十代でも、素敵な方が多いです。昔のように、老け込まないで、生き生きと自分の人生を歩いているような気がします。この小説集は、このような女性への応援歌ですね。

私が好きなのは、「旅の続き」
再婚相手と、その両親に挨拶に行く列車の中で、昔の恋人によく似た人に出会う。いつも死にたがっていたあの青春時代に出会った彼との想い出が、頭の中を駆けめぐる。どんなに落ち着いて見える女性でも、青春時代には、燃えるような青春の想い出があるんだということは素敵なことです。

そして「たんぽぽ」
夫の級友とのプラトニックな関係。その関係に終止符を打ち、次の段階に進もうとした時のアクシデント。これは、若者にはない切ない恋の物語です。

そして表題作「夜の寝覚め」
切なすぎて、あり得そうもないことだけれど、美しい恋物語です。綾子おばさんのような心を持った女性ではありたいけれど、それを実践することは難しいでしょう。