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「世界をだました男」   
フランク・アバネイル   03.04.08
    
20世紀最大の詐欺師ーーそれはわたしだ。
ある時はパンナムの副操縦士。ある時は病院のレジデント。
ある時は法律家。またあるときは大学講師。
偽造小切手だけで、21歳までに稼いだ金額は締めて250万ドル。
全米50州はおろか、26カ国の警察から追われたが、
美食も素敵な車も魅力的な女も豪奢な住まいも思いのままだった・・・・。
稀代の犯罪者が明かす、驚くべき至芸の全貌!
(背表紙より)


今公開中の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の原作で、本人の自伝です。
映画を見て、なんとまあ、すごい人だろうと思ったのですが、映画よりも、この本の方が(と言うことは、実物の彼の方が)もっとすごかったのは驚きでした。
映画は、事実のままではなく、随分脚色してあります。それも控えめに・・・。

映画で主演のレオナルド・ディカプリオは、28歳で、高校生役を難なくこなして、驚かせてくれましたが、反対に、本物の彼は、16歳で、26歳に苦もなく化けることが出来たのでした。しかも、器用で、頭も非常に優秀です。そして、人を騙すための努力、観察も怠りません。どんな状況に置かれても、とっさの判断で他の人物になりすまして、苦境を乗り越えてしまうその判断力もすごいです。

出会った人のほとんどは、彼の人的魅力の虜になったそうです。一度会ってみたいですね〜。そんなに魅力的な彼に・・・。本に、小さな写真が付いていましたが、なるほど、なかなかの男前でもあります(^^)。
しかし、さすがに、全世界を騙し歩いたそのつけは、彼を精神的にずいぶんと追い込んだようで、常に追われるつらさも身にしみたようです。

そして、彼の人生上もっとも辛い経験だった、フランスの刑務所。彼は、ここで、半死半生の目にあったのでした。
今では、もうさすがに改善されたでしょうけれど、当時のフランスの牢屋は、何世紀も昔の石牢のイメージのようでした。怖ろしい(^^;。
そして、正反対のスウェーデンの刑務所。彼は、ここの国の警察に命を助けられたのでした。
そんなこんなで、様々な偶然や、人の善意によって、21歳以降の彼の人生が開けたようでした。なんと言っても、年齢からだけ見ると、若気の至りといえる犯罪。でも、確信犯なのよね、実は・・・。

もちろん、今の時代に、彼の手口は、もう通用しないでしょう。これは、コンピューターがない時代のローテク犯罪です。そして、人々も今から見ると考えられないほどのんびりとしています。愛すべき人々。でも、反対に考えると、彼、F・アバネイルのように、人の裏をかくような犯罪者が、今のようなぎすぎすした社会を作り上げたと言えるかもしれません。