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「紅楼夢の殺人」
芦辺 拓  


人工の楽園「大観園」で奇怪な殺人絵巻が!

あるいは衆目を前にして死し、あるいは死して宙に浮かび、あるいは忽然として屍を現わし…。
絶世の貴公子と少女たちが遊ぶ理想郷で、謎の詩句に導かれるように起こる連続殺人の真相とは?中国最大の奇書『紅楼夢』を舞台に、著者が放つ入魂の本格巨篇。 (帯より)



「紅楼夢」・・・中国文学には疎いので知りませんでしたが、これは、中国四大奇書(他に「水滸伝」「三国志」「西遊記」「金瓶梅」など)の一つと言われるほど有名な作品だそうです。豪華絢爛な中国の富豪の家に生まれた主人公が書き綴った、栄枯盛衰の話らしいのですが、この芦辺拓氏の「紅楼夢の殺人」は、その登場人物や背景そのままに、その屋敷内で殺人事件を起こしてしまいます。
これは、「あとがき」にも著者自身が書かれているように、さぞや大変な創作活動だったろうと思われますね。
著者自身は、昔から中国文学に親しんできたらしいので、下地は十分出来ていたのでしょうが、元の名作のイメージを壊すことなく、その中で殺人事件を起こし、そして且つ、それを難解な推理物に仕立てるのですから、書いている途中で、書き始めたことを後悔したこともあったのではないでしょうか。
私自身は、冒頭に書いたように、「紅楼夢」自体を未読だったので、とても新鮮に読むことが出来ました。
ただ、登場する数多くの人物相関を理解するのが大変なのと、名前が覚えにくい・・・と言うか、読めないので、苦労いたしました(^^;。
しかし、作品の文章は、流れるようになめらかで、その豪華絢爛さや美男美女ぶりを頭に思い浮かべるのも楽しく、思いの外、するすると読み進むことが出来ました。
ですが、謎解きは難解で、自分で解くことは、まず無理でしょうね〜。
ラストのあざやかな謎解き、そして、この一族の終末が印象的でした。(2005.10.27)