シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     




「アイの物語」
  山本 弘




機械とヒトの千夜一夜物語。
数百年後の未来、機械に支配された地上。
その場所で美しきアンドロイドが語り始めた、世界の本当の姿とは。
(「BOOK」データベースより)



読み始めてすぐ、失敗したかな。と思いました。私の苦手なSFファンタジーだったからです。なんでも、作家の思うとおり、そして、都合のいいように設定を変えられるこの手の作品は、どうも好きになれないのですが・・・。

本の構成は、アンドロイドのアイビスが読む物語と、その物語についてアイビスと”僕”が話し合う「インターミッション」とが、交互に構成されています。
最初の物語「宇宙を僕の手の上に」では、内容についてゆくのが大変でしたが、第2話の「ときめきの仮想空間」辺りから、面白くなり始めました。そして、それ以降は、話の中にどんどん引き込まれてゆきました。面白い!

一番考えさせられたのは、「詩音が来た日」。人間とロボットとの違いに、いちいち、はっとさせられました。そして、彼女(詩音)の、的確な考え方にも教えられたような気がします。

この本の(作者の)考えには、1本の筋が、はっきりと通っていて、だからこそ、読んでいて、気持ちがいいのです。
最後まで読んでゆくと、作者の言いたいことが、はっきりと分かってきます。
そして、読んでいる私たちも、文中の”僕”のように、そのことを、すんなり受け入れることができるのです。すばらしい!!

そして、これを読んでいると、人間の愚かさが、情けなく、そして、愛おしく思えてきます。
ロボットを作り、それを人間と同じ形、機能にし、心を持つことを求め、そして、出来上がったロボットに恐怖する。
全くバカですねーーー(^^;。
それに引き替え、ロボットの考えのなんと筋の通った、明確なことでしょう。
地球上で偉そうにしている人間も、こんなもんなんだなと、なんだか、肩の力が、抜けました。 (2006.12.08)