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「最愛」
  真保裕一


十八年間音信不通だった姉が、意識不明で救急病院に搬送された。重傷の火傷、頭部の銃創。それは婚姻届を出した翌日の出来事だった。しかも、姉が選んだ最愛の夫は、かつて人を殺めた男だという……。姉の不審な預金通帳、噛み合わない事実。逃げる男と追う男。「姉さん、あなたはいったい何をしていたんだ……」慟哭の恋愛長編。 (出版社 / 著者からの内容紹介より)


謎に満ちた展開で、終盤まで、どういう結末になるのか、分かりませんでした。
事故で瀕死の重傷を負った姉、千賀子。新妻が入院しても、病院に現れない夫。病院を見張る無礼な警官。そして、ひたすら自分を責める主人公、悟郎・・・。

ベッドで、生死の境をさまよう姉を残して、主人公は、姉のそれまでの生き様を探ります。
18年間別れていた姉の生活は、不明なことばかり。残されたわずかな手がかりから、真相に迫る弟。

終盤になって、一気に、真相が見えてくるのですが、この謎解きを、弟が、名探偵ばりに、やってのけることに、違和感を持ってしまいました(^^;。
姉への愛の力が、弟を真相へと導き、血のつながりが、その正しさを裏付けした結果なのでしょうけれど、その思いの強さに、人は、むしろ、正しい判断力を失いがちではないのでは、と思います。
ただただ、結末があって、そこへの道筋を悟郎に進ませた感がぬぐえませんでした。

そしてあの結末・・・。
いろいろと伏線はあったのですが、やっぱり、やりきれなさが残りましたねぇ。 (2007.08.11)